中野吉之伴フッスバルラボ

《指導論》「なんで?」と向き合える環境がありますか?人間関係を円滑にするための適切なフィルター選びの大切さ

▼ 我が子への思いは特別なれど

パソコンを前に「さあ、やるぞ!」と気合を入れた瞬間、言葉が頭の中から消えてしまうことがよくある。そうかと思うと何も考えずに街中を歩いていると、いろんなフレーズが浮かび上がってくることがある。この前もそうだった。慌ててメモした言葉の数々を見返してみた。

なんで僕らはその一言を飲み込めないんだろう。
なんで僕らはその一言を口にしてしまうのだろう。

いつも同じように後悔して
相手が許してくれるのを願って
そしてまた同じようなミスを繰り返す。

わかっているはずなのに
どれも自分の弱さのせいだって。

自分が楽になりたいから
自分が納得したいから
自分のイライラを払拭したいから

相手が傷ついて
心を痛めることをわかっているはずなのに
鋭いナイフで切りかかる。

でも「子どもが傷つくのはしょうがない」なんてわけがないんだ。

絶対に。

子どもが何かミスをする。それがミスだと理解していない。どのように解決すべきかわかっていない。そのことにイライラし、こちらが思った反応がないことに激高してしまう。

我が子に対しては特に《フィルター》がかかりにくい。

信頼の裏返しと僕らは言う。でもそれはあまりに自分勝手な言い分だ。

信頼という言葉を隠れ蓑に、自分がイメージしたような振る舞いをみせない子どもに違和感を勝手に感じ、勝手に怒り狂い、そして一方的に攻撃する。

猛省、したはずだった。なのにまた同じことをしていることに自己嫌悪する。

だから正しい《フィルター》をつければいい。

ありのままの心でぶつかり合ってすべてを自然と分かり合えるという幻想のために、結果として子どもが傷つくならこちらのアプローチが間違っているんだから。

少しの距離を取る
上から目線にはならない
相手の言い分にも耳を傾ける
怒りをため込む前に丁寧に向き合っていく
感情的なパートと論理的なパートを分けて向き合う

怒りの沸点は人それぞれだ。でもその沸点を超えてしまうと自分の心を制御するのは極めて難しい。整えるべきはその前の状態だ。沸点に達しないように心を落ち着け、問題点を把握し、解決策を考慮する。一方通行にならないように、やるべきことがお互い納得いくように、そしてそれがポジティブな結果につながるように。

我が子に対する感情は特別だ。

それはとても素敵なことであり、でもだからと言ってそれを言い訳にしてはいけないんだ。

心から愛する我が子に、心から愛することがもっと素直に伝わるようにできることが僕らにはたくさんある。

育成指導者だからと我が子との向き合いから逃げることはよくない。まず向き合うべきは我が子なのだから。

そんなことを思いながら、それでも何度も失敗しながら、

それでももっといい関係性で一緒に成長していけるようにと、僕は今日も生きている。

(残り 3083文字/全文: 4218文字)

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