国際コーチ会議で学んだパーソナリティを育むことの大切さ。サッカーにだけ明け暮れて、人間的な成長をないがしろにすることはあってはならないのではないだろうか?
▼ 過去の国際コーチ会議を振り返ってみよう!Vol.1
例年であれば7月下旬はInternational Trainer Kongressが開催される時期だ。日本語訳で国際指導者会議となるだろうか。日本メディアでは国際コーチ会議、国際コーチカンファレンスと紹介されることが多い。
毎年3日間にわたって行われるこのイベントは、最新情報をインプットすることができるし、旧知の友人指導者と再開することができる楽しみの場なのだが、今年はコロナの影響で残念ながら中止に。
しょうがないのはしょうがないのだが、だからと何もしないというのではよろしくない。
そこで今月から過去僕が参加してきた国際コーチカンファレンスの講義や実技内容をフッスバルラボの方でご紹介していこうと思う。僕にとっても絶好の復習機会になるし、読者の皆さんにとってもサッカーの学術的なとらえ方や、トレーニングの論理的な考え方などを少なからず感じ取ってもらえるのではないかと思う。
さて今回は僕が一番最初に参加した09年国際コーチカンファレンスよりヘルタU17監督トーマス・クリュッケによる「育成選手パーソナリティサポートのための措置」をお届けしたい。
▼ ブンデスリーガクラブが担うべき責任とは?
才能があり、将来性が高いと見込まれる育成選手がプロクラブの育成チーム入りを目指して躍起になる。チームに入ったらそこでもしのぎを削り、狭き門を通り抜けようとする。
サッカーにかける情熱。
サッカーで生きようと必死の努力。
それを否定するつもりは毛頭ない。でもどれだけ頑張って最高学年までチームに残れたとしても、U18、U19からトップチームへと進む”パス”を手にすることができるのは毎年数人だけ。一人も残れない年だって普通にある。その事実を知ることも必要だ。
「それがプロの世界だよ」
「この厳しい崖を這いあがったものだけが成功者だ」
もちろんそうした側面はある。生半可なことでは到達できない世界だ。
でも、だからとそうではない人たちをバッサリ切り捨てることが問題ないというわけにはならない。
誰が最終的にプロになるか、ならないかは誰にもわからない。
だからどんな子とも大切に触れ合い、将来的に選手としても、人としても自立して生きていくための基盤を身につけられる環境を提供する義務があるのだ。
競争原理の中に子どもたちを投げ込み、そこから這い上がってくる選手だけを重用するのではない。人生で先を歩く大人の代表として、彼らを様々な面からサポートし、彼らの良さを引き出し、彼らの成長を促す働きかけを丁寧にすることこそが、育成現場ではとてもとても大事なことなのではないだろうか。
クラブとしても、一人でも多くの優れた選手がプロに上がるという目的をかなえるうえで、チーム全体のクオリティを高め、それぞれが健全な競争の中で切磋琢磨し、その中でともに仲間として支え合うという関係性を作れた方が、意義という面でも、効果という面でもポジティブにとらえられる。
クリュッケン「子どもたちは毎日、いろんなストレスの中で生活しています。そしてプロの育成機関でプレーする子どもたちが直面する問題はサッカーのことだけではありません。彼らは一般的な街クラブの子どもたち以上の頻度で練習をし、試合をしています。それだけで大変でしょう。
”常にいいパフォーマンスを発揮し、いついつまでにこのくらいのレベルにならなければならない”
そうしたプレッシャーが強くなりすぎると、自分と向き合う余裕もなくしてしまうでしょう。
だからこそクラブとしては、彼らが負担につぶされることのないように最適なバランスを見出すことが大切になります。それはクラブとして持たなければならない責任です」
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