中野吉之伴フッスバルラボ

ドイツの子どもたちがする遊びってどんなの?遊びの中で自然とサッカー的要素も身についていく

▼ 子どもたちが自分たちで楽しむための遊びを紹介

子どもたちが子どもたちらしく遊べるという環境はとても大切。DFB(ドイツサッカー連盟)は世界1位となる会員登録数を誇り、その数は18年時点で706万人!でもそんなドイツでも子どものスポーツ離れが社会的な問題になっているのをご存じだろうか。

現代では子どもたちにも多種多様な選択肢がある。学校から帰ってきた子どもがランドセルを放り投げて近くの公園に一目散にかけていく姿は、特に都市部では少なくなってきており、その影響は実際に統計でも数字として示されているある研究報告によると今日の子どもたちは1週間に30時間以上テレビやパソコン、あるいはスマホやタブレットとともに時間を過ごしているという。そして外遊びをしなくなった結果、子ども達の多くが健康上の問題を抱えているのだ

ドイツの子どもたちが抱える問題

姿勢の悪い子ども 5060

太りすぎの子ども 3035

・心肺機能に問題がある子ども 20~30

コーディネーション能力に問題のある子ども 3040

これは拙著「年代別サッカートレーニングの教科書」にも記述してあるが、外遊びをしなくなると健康面だけではなく、他の子どもと遊ぶ機会が減ることで、人間関係や社会性を養う場が失われるというデメリットがる。こうした問題を解消するために学校や様々な教育機関、スポーツクラブが働きかけ、小さいころから外で思いっきり遊ぶことをどんどん推奨しているし、さまざまなレクリエーションプログラムなども組まれているし、こうした動きは今後さらに増えてくるだろう。

ドイツにおいて希望があるのは、外遊びがしたい子が遊べる場所がまだまだちゃんとあるという点だ。町や村のいろんなところにボルツプラッツという空き地がある。人口に応じて十分な遊び場があるかというと、都心部では必ずしもそうではないのは確かだが、それでも行政が管理している公園の一角だったり、森や草原の合間にだったりで、ボールを蹴ったり、走り回ったりできる場所が見つかるという印象を受ける。ほとんどのボルツプラッツにはサッカーゴールが備え付けられており、誰でもいつでも自由に使用することができる。

例えば私が息子たちとボールを蹴っていると、ちょっとずつ子どもたちが集まってきて、気がつくとそこでミニゲームが始まったりするわけだ。知らない子ども同士が何の問題もなく、時々けんかをしたりもするけど、楽しく、ワイワイと、でも本気でサッカーができる場所。近所でボールを蹴りあっていた仲間たちがちょっとずつ大きくなって、いつの日かサッカークラブで一緒にプレーすることもあるし、ライバルチームとして対戦するという再会もあるわけだ。つまり、私たちにとって、彼らにとって、ボルツプラッツというのはサッカーの原体験ができる大事な場所ということができる。

ちなみにドイツでは学校に部活動がないため、校庭はほとんどない。あっても土のグラウンドではなく、かたーいアスファルト。でもそこにもサッカーゴールはある。うちの近くの小学校でも、放課後一度家に帰った子どもたちがまた集まってボールを蹴りあっている姿をよく見かける。ここも彼らにとっては一つのボルツプラッツといえるだろうか。

ドイツの子どもたちはシュートが好きだ。まちがいなく大好きだ。ボルツプラッツに集まると、やっぱりシュートを中心としたゲームがスタートする。サッカークラブのトレーニング前にもそうした風景がそこにある。だからだろうか。ドイツの子どもたちはボールを止めて、蹴るということに関して、非常にレベルが高い。まだ体の小さな幼稚園児でも、力強く、しかも4隅を狙うようなシュートを蹴れる子どもが普通にいるのだ。遊びを通して自然に身につけていくサッカースキル。

では実際にどんな遊びをドイツの子どもたちはしているのだろうか。いくつか紹介していこうと思う。

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