中野吉之伴フッスバルラボ

何をほめる?どうほめる?ある実験結果から考える。

こんにちは。メルマガ編集・管理のゆきのです。11月に入り、街の雰囲気が一気にクリスマスに向けて華やいできました。まだ2カ月もあるのにもうクリスマス?と思われそうですが、ドイツの11月は日がどんどん短くなり、お天気もどんよりと重く暗く寒くなっていき、心身ともに調子を崩す人が増えがちな時期。だから少しでも楽しくなりそうな話題を見つけて、この季節を乗り切ろうとするのかもしれません。早い夕暮れを彩るイルミネーションの準備も少しずつ始まっています。

ドイツの学校には、日本の中・高のように決まった時期に全科目で実施される形での定期テストがありません。どのくらいの頻度でどの時期にテストを実施するかは、学校によっても科目によっても様々なのですが、だいたい1か月~2週間前くらいにテストの日程と内容が告知され、生徒たちはそれに向けて準備をすることになります。9月の新年度スタートから約2か月経ったこの時期は、比較的テストの多い時期のようで、息子たちは毎週何かしらのテストを持ち帰ってきます。

息子たちの点数を眺めて、どのようにコメントするべきか。2011年に書かれた少し古い記事ですが、こんな実験の結果をまとめた記事を見つけました。

より速く適切に学べる人、その理由:ほめ方の研究

少し長い記事なので、ここで簡単に記事内で紹介されている実験についてまとめさせて頂きます。

テーマは「子どもの能力をほめるのか、努力をほめるのか。『何を、どうやってほめられたか』が、その後の子どもの取り組みを決める」というもの。

実験者は、400人の5年生に、比較的かんたんなパズルの問題を出しました。その後、子どもたちに結果を伝えて半分の200人の生徒には「あなたは頭がいいんだね」という言葉で、そ知性をほめ残りの200には「一生懸命やったね」という言葉で、その努力をほめました。

実験者は、当初、この言葉がけの違いにそれほど大きな意味があるとは考えなかったといいますが、その後2グループの子どもたちが取った行動は大きく異なるものでした。

詳しい内容はぜひリンク先の記事をお読みいただきたいのですが、「一生懸命やったね」と努力したことをほめられた子どもの多くは、その後、別のパズルが与えられた時に、より難しい課題に積極的に挑戦していきました。一方で、「あなたは頭がいいんだね」とほめられた子どもは、レベルの高い課題を避けるか、すぐ諦めてしまい、最初に解いたパズルと同程度の難易度の課題を選びがちになる、という結果が出たそうです。実験者はこれについて、一度「頭がいい」と評価されたことで、評価を下げたくないと子どもが強く感じてしまい、リスクのある行動をとらなくなるのではと分析しています。

実験は、さらに次のように続きます。課題を終えた子どもたちに「あなたより成績が良かった人悪かった人、どちらかの答案を選んで自分の答案比べていいよ」と指示すると、「一生懸命やったね」とめられた子は、自分より成績のよかった答案を見て、自分の間違えた点や理解できなかった点を確認しようとする割合が高かったそうです。いっぽう、「あなたは頭がいいんだね」とほめられた生徒たちは、ほぼ全員が、自分より出来が悪かった答案と自分比較することで安心し自信を傷つけずにすむほうを選んだそうです。

いかがでしょうか。もちろんこの実験一つから「子どもはこのようにほめるべきだ」と安易に結論づけることはできません。子どもの性格にもよるでしょうし、子どもが取り組んだ課題の内容にも、そのほめ言葉が発せられた状況にも、ほめ言葉を伝えた大人との人間関係にも、結果は大きく左右されるでしょう。

私が個人的にこの記事から強く感じたのは、大人として、子どもが失敗をおそれず挑戦できる環境を作ってあげたいということ。そして、子どもがたとえ失敗したとしても、目標に向けて努力し、挑戦しようとしたのなら、大人はまずその努力や挑戦心を認めて拍手を送るべきなのではないかということです。テストの点数にせよ、スポーツでの結果にせよ、本人が頑張っていたことを親として知っているのなら、かけるべき最初の言葉は、月並みかもしれませんが、何よりもまず「よく頑張ったね」なのではないかな、と思いました。明らかにさぼっていた場合にはまた別のコメントを考えなくてはいけませんが(苦笑)。

子どもだろうと、大人だろうと、誰だって自分の評価や自尊心は下げたくないものです。失敗を恐れるのはとても自然な感情ですし、失敗して傷ついたり落ち込んだりするのも当たり前のことです。だからといって、絶対に失敗しないことだけを最優先にしていたら、人は成長できません。子どもには、転んでも起き上がれるということを伝えたい。失敗することが怖くなるような言葉がけには気をつけなくては、と思っています。

今週もお読みくださりありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします!

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