中野吉之伴フッスバルラボ

バーモントカップから考えるサッカー指導者がフットサルを学ぶべき理由

こんばんは。
管理人の木之下です。

8月の特集でもドイツ国際コーチカンファレンスの記事を配信していますが、非常に濃い内容になっています。ドイツサッカー連盟A級ライセンス以上の指導者が参加できるカンファレンスに中野自身も参加し、様々な専門家が発した意見をわかりやすくまとめてくれています。9月も引き続き、「ワールドカップ」をテーマに会議で出た意見などを交え、中野が日本の育成でどういう取り組みをすべきかをフィードバックします。

▼9月の特集企画

 「ワールドカップで感じたこと、育成への取り組み」

ワールドカップで感じたこと、育成への取り組み…etc(中野
【水】フリー or お知らせ…etc(木之下)
ワールドカップで感じたこと、育成への取り組み…etc(中野
※基本的に特集企画は変更しませんが、その他は変更の場合があります

他にも、新シーズンが始まって復活するfootballistaさんとの提携企画「指導者・中野吉之伴の挑戦」やフリーコラムなどをお届けします。このWEBマガジンでは「育成」という普遍的な観点から情報配信を続けていきますので、9月も応援のほどよろしくお願い申し上げます。

主筆者 中野吉之伴 【Twitter=@kichinosuken
管理人 木之下潤 【Twitter=@jun__kinoshita

ところで先日、全日本U-12フットサル選手権大会「バーモントカップ」の取材に行ってきました。良くも悪くも様々な発見がありましたが、今年は「大会意義」について深く考えさせられました。

出場チームはほとんどがサッカークラブで、10チーム弱がフットサルクラブという図式です。そもそもが「フットサル」の大会なので、サッカークラブにとってはフットサルというスポーツをサッカーに上手に取り入れる学びの場とするのが理想なのですが、繰り広げられるのは単なるスモールサイドのサッカーです。

何が悪いのか?

そう思う関係者もいるかもしれませんが、試合を見ているとフィジカルを強調するサッカーを展開するあまり、フットサル本来の特徴である「認知-判断」の部分が発揮しにくい大会になっているのです。サッカーのピッチを小さくしただけの全国大会ならばU-12年代の選手たちにとってはあまり意味をなしません。

いかに球離れを早くして展開を素早くし、状況に応じて「認知-判断」を素早く行って「決断-実行」に移すか。そこを高めることが大きな大会意義であるはずなのに、味方の状況すら見ずにパターンにはまった展開に終始して自分たちの流れに持ってこれずに負けてしまうチームが多くを占めていました。

フットサルの良さはボールが弾まないがゆえにサッカーよりも容易にボールコントロールができ、味方と敵とスペースを見ながら戦術的なプレーができることです。つまり、普段は1タッチコントロールで失敗することが多いが、そこがフットサルは比較的うまくいくからこそ次のプレーの段階を体感することができるのです。だから、フットサルをスモールサイドのサッカーと捉えずに、一度フットサルそのものを受け入れて自分たちなりのプレーをした方が選手にとってもチームにとっても得るものが大きいのです。

しかし、私がいくつか取材したサッカークラブからはフットサルの特徴や良さすら知らず、単にスモールサイドのサッカーをすると学ぶ場を放棄したような言葉ばかりが返ってきました。それならば全日本U-12フットサル選手権大会ではなく、「全日本5人制サッカー選手権大会」とすべきでは?と思います。

ロシア・ワールドカップでは、イングランド代表がセットプレーをバスケットボールから学んだとの報道が取り上げられましたが、「ならば、フットボールという同じ括りのフットサルからはもっと多くが学べるのでは?」というのが個人的な意見です。

フットサルのプレーがそのままサッカーに当てはまるとは思いません。でも、応用できることはたくさんあります。特にオフ・ザ・ボールのプレーは非常に使えるものがあり、と同時にオン・ザ・ボールの狭くて短い時間しかない場合での足裏コントロールやビルドアップ時にファーストディフェンダーを突破する時のパス&コントロールはサッカーとほぼ同じ考え方で用いることが可能です。

サッカークラブに取材すると、まだ多くの指導者がフットサルを別物に見ています。それならそれで構わないけど、学ぶものが数多く存在することは確かなので、一度フットサルそのものに目を向けてこの大会をいい機会と捉えて研究し、子どもたちに還元してあげて欲しいと感じています。

優勝した大阪のジュネッスFCやベスト8まで勝ち進んだ神奈川のFCパーシモンなど数少ないクラブはサッカークラブにとって非常に参考になるフットサルの取り入れ方をしていました。彼らは「認知-判断」に優れ、フィジカルでなんとか対抗しようとする相手に対しても戦術的なプレーで対抗して結果を残しました。

来年は、全国的にもまだまだ数が少ないフットサルクラブが自分たちの土俵にサッカークラブを引きずり込んで圧倒的な力で勝つような試合も望んでいます。そうなれば、日本のジュニアサッカー界もまた一つ上の階段を上れるのではないかと思っています。

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