中野吉之伴フッスバルラボ

昨今ブンデスリーガでは「地域還元」がテーマだ。その一つとして地域指導者への講習会が開催されているので、それをレポートする

南バーデン州サッカー協会とSCフライブルクが共催開催した「第一回ジュニア指導者講習会」に参加した。

【概要】
題材:ジュニアサッカー
対象:U11までの指導者
参加:自由
費用:無料

フライブルクを中心に、ドイツ南西部に位置する南バーデン州サッカー協会には715のクラブ、5715のチーム、272181人の選手が登録している。今回は州内各地から120人の指導者が集まった。最近、ブンデスリーガクラブで注目されているテーマの一つが『地域への還元』だ。例えば、ホッフェンハイムでは地元指導者向けのゼミナールが定期的に開催されている。

育成とは一クラブ、一チーム、一指導者の力で何とかなるものではない。

様々な関係者が力を合わせることでしか、子どもたちが成長していく環境を作り上げることはできないのだ。私たちが育てるのではない。彼らが育つのだ。その土台を作り上げるための投資は大きな意味を持つ。SCフライブルクの育成アカデミースポーツ部門統括マルティン・シュバイツァーはこのように指摘した。

「大事なのは、SCフライブルクと地域とのドッペルパス(ワンツーパス)。パスを出しっぱなしではいけないし、もらいっぱなしでもよくない。パス交換をしながら共に進んでいく。クラブとしては州内のトップレベルの選手を迎え入れたいといつでも思っているが、そのためには皆さんのような町クラブの指導者の存在が非常に重要だ。

残念ながらここを去らないといけない選手も出てくる。そんなときに『残念だったね、バイバイ』ではなく、彼らが地元クラブに戻り、そこでの経験をクラブに還元できるように、そしてずっと交流していけるように、ここでの生活を導いていかないといけないんだ。我々はそのために努力するし、その先を見据えて共にありたいと思っている」

プロクラブの育成アカデミーでプレーする=成功への近道というわけではない。どのタイミングからよりプロフェッショナルでよりハイレベルなところでプレーするべきか、は人によっても違う。

講習会用のパンフレットにSCフライブルク元選手ユリアン・シュースターのコメントが紹介されていたのでここで引用したい。

「子どもからユースまでの間ずっと、故郷のクラブFVレッヒガウで過ごすことができたのは幸せだった。家族の元にいられたし、クラブは子どもたちと指導者の育成に力を入れていた。友人たちとすばらしい時間を過ごすことができたし、サッカー以外のスポーツを楽しむことができた。それに自由にサッカーをすることができたのもよかった。この時間がいまのぼくにすごい影響を与えている」

人の基盤を築き上げる時期には、その人の思いを受け止める場所が必要だ。シュースターにとってはそれが古巣クラブだった。それぞれの成長はどこで育ってきたか、にも関わってくる。上のレベルへの移籍は早ければ早い方がいいわけではない。成長というのは固定のモデルケースがあるわけではないのだ。

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