「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【レポート 天皇杯準々決勝 福岡-湘南】天皇杯ベスト4。アビスパらしい戦いでクラブの歴史に新たな一歩を記す

天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会 準々決勝
2022年8月30日(水)19:03キックオフ
会場:ベスト電器スタジアム/3,325人
結果:アビスパ福岡 3-1 湘南ベルマーレ
得点:[湘南]鈴木章斗(4分)、[福岡]山岸祐也(44分、67分)、佐藤凌我(73分)

クラブの歴史に新しい一歩を記す。その強い想いは開始直後の失点をものともしなかった。湘南の前に向かう強度の高さとスピードに真っ向から対応。すぐに自分たちのリズムを取り戻すと44分に山岸祐也のゴールで同点に。そして67分に再び山岸が勝ち越し弾を決めると、73分には佐藤凌我がダメ押しの3点目。守っては湘南のシュートを2本に抑えて準決勝進出を決めた。クラブ史上初の天皇杯ベスト4に、長谷部茂利監督は「非常に嬉しいし、チーム、クラブで一つ目標をかなえた」と顔をほころばせた。

3-1の勝利。放ったシュートはアビスパの16本に対して湘南の2本。だが数字が示すほどの差はなかった。開始直後の4分に許した先制点。その後は勢いに乗って強度高く、そしてスピード豊かに前に出る湘南がリズムを刻んだ。たが、アビスパは慌てていなかった。高いラインを敷いて前への圧力を強くしようとする湘南に対して、鶴野怜樹がスピードを活かして裏へ抜け出すことで、じわじわとリズムを取り戻していく。

ベースは前からのプレスと球際の強度。同じようなスタイルを志向する湘南との争いでは、時に局面で上回られる場面もあったが決してひるまない。高い位置からプレスをかけて、中盤でボールを奪取。左シャドーの位置に入る山岸が少し下がったところでボールを受けて起点を作れば、1トップの鶴野がスピードを活かして湘南の最終ラインの裏へ飛び出し、その間にできたスペースに佐藤が入り込んでチャンスを繋ぐ。守っては奈良竜樹、ドウグラス グローリ、井上聖也の3人が圧倒的な強さを見せつけて湘南にシュートチャンスを与えない。

攻守一体となって連動するアビスパ。そして44分、その形から同点ゴールが生まれる。相手陣内高い位置でボールを失ったところを鶴野が素早くプレスバック。そこへ井手口陽介が参戦して、これでもかとばかりに2人でボールを追いまわす。そして井手口が奪ったボールを山岸へ。そこから佐藤、前寛之、さらに右へ移動してきた山岸へと渡り、山岸の右足がゴールネットを捉えた。良い守備から始まる良い攻撃。まさにアビスパを象徴するゴールだった。

このゴールでさらにアビスパのベスト4への強い想いが爆発する。2点目は67分。井手口が鋭い出足で湘南からボールを奪って紺野和也へ。さらにドリブルで持ち上がる紺野を追走してリターンパスを受けると、そのままゴール前へ持ち込んで山岸祐也にラストパス。これを山岸が落ち着いて流し込む。

佐藤凌我のダメ押しの3点目は67分。紺野が相手陣内の深いところで猛烈にプレス。そこから前へ出てくるパスを井上聖也が狙っていた。鋭く寄せて相手陣内でボールを奪って山岸へ。山岸がワンテンポためを作ってからスルーバス。それを佐藤がワントラップで右足の前に止めたところで勝負あり。迷わずに右足を振り抜いてファーサイドのゴールを打ち抜いた。いずれのゴールも鋭いプレスでボールを奪ってから素早く切り替えて奪ったゴール。「今まで目指してきたボールを奪ってからの得点というところを出せたのはすごく良かった」と前寛之は振り返る。

2得点1アシストとFW歳て文句のない活躍を見せた山岸。攻守のお膳立てをして90分間違いを見せ続けた井手口。鬼気迫る迫力で湘南の突破を許さなかったドウグラス グローリと奈良竜樹。彼らの活躍だけではなく、この日ピッチに立った全選手、そしてピッチに立たなかった選手、さらに言えばそれぞれの場所からアビスパへの熱い想いを送ってともに戦ったアビスパに拘わる人たち。すべての人たちが最大出力を出し、自分たちが目指すスタイルで手にして天皇杯ベスト4。何から何までアビスパらしい戦いだった。

だが、ベスト4進出も終わってみれば過去の出来事。もっと上を目指す戦いが待っている。天皇杯はもちろん、ルヴァンカップ、リーグ戦と、さらなる高みを目指してアビスパの挑戦は続いていく。

[中倉一志=取材・文・写真]

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