「football fukuoka」中倉一志

J2第8節 北九州-福岡レポート

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2015明治安田生命J2リーグ第8節
日時:2015年4月19日(日)15:03
会場:本城陸上競技場/5,184人
結果:ギラヴァンツ北九州0-1アビスパ福岡(前0-1、後0-0)
得点:[福岡]中原(40分)

アビスパ福岡は19日、アウェイ・本城陸上競技場でギラヴァンツ北九州と対戦。雨の中で行われた試合は、両サポーターの熱もあって拮抗した試合となったが、試合のペースを握っていたのは福岡。40分に鈴木惇のCKに中原貴之が頭で合わせて先制すると、後半もゲームをコントロールして時間を使った。北九州は残り15分となったところで渡大生を投入し猛攻を繰り出したが、粘り強く守る福岡の壁を崩せず。9回目の福岡ダービーは福岡が制した。福岡は次節(4/26)、ホーム・レベルファイブスタジアムで、FC岐阜と対戦する。

気持ちが伝わる前半
立ち上がりから試合を支配したのは福岡だった。この日の狙いは、相手のボランチに対して高い位置からプレッシャーをかけて、北九州のパスワークを封じてしまうというもの。そして、奪ったボールを素早く攻め切ることだった。その狙い通り、末吉隼也、鈴木惇の両ボランチが、風間宏希、加藤弘堅にプレッシャーをかけて北九州の攻撃の起点を潰すと、奪ったボールを縦に速く運んでゴールを目指した。立ち上がりに、ミドルレンジからのシュートが多かったのは、素早く攻める意識の高さを窺わせるものだった。

もうひとつの狙いは、北九州が引いてブロックを作った時に、慌てて攻め込まずに、ボランチを中心にして、サイドチェンジを交えながらボールを動かし、相手にリズムを与えないこと。全員が細かく動きながらパスをつなぎ、真中で構える鈴木惇が、ピッチに広くボールを配って攻撃を組み立てていく。そして、チャンスと見るや左サイドから亀川諒史が積極果敢に攻め上がった。序盤の支配権は福岡。北九州に特長を出させないまま試合を進める。

15分が過ぎたころから、プレッシャーを嫌がる北九州が、中盤を飛ばして長いボールを使ってリズムを取り戻しにかかったが、落ち着いて対応する福岡は、ほどなく試合の主導権を奪回する。そして40分、亀川の仕掛けを起点にして得たCKから先制点を奪った。キッカーは鈴木惇。「直接ゴールに入るイメージで蹴った」(鈴木)というボールに中原貴之が頭で合わせた。
「練習通りに、GKが出られない位置に僕とツツ(堤俊輔)が立ち、惇がいいところに蹴り込んでくれたので触るだけだった」(中原貴)
試合運びも狙い通りなら、得点も準備してきた形からのゴールだった。

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福岡(3-4-2-1)
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北九州(4-4-2)

狙い通りに手に入れた勝利
後半も福岡の支配が続く。前半同様に、引いて守る北九州に対してセカンドボールを支配。急がずにボールを動かし、ボールを奪いに来たところをいなしながら、ピッチ広くボールを展開しながら、北九州が作ったスペースを利用してゴールを目指す。そして、小松塁へのハイボールに対しては、徹底マークするイ グァンソンが、ことごとく弾き返していく。追加点が取れないという課題も見えたが、北九州に攻め込まれる心配のない展開は、リードを奪っている側とすれば、決して悪くないものだった。

だが、終盤に来て北九州も意地を見せる。74分、小松塁に代わって渡大生がピッチに登場すると、この交代が合図になったかのように試合の流れが代わった。ゴールを目指して中央で仕掛ける渡に引っ張られるように、北九州の選手たちが、この試合で初めて前への意識を露わにする。そして疲労も影響したのか、福岡の最終ラインが下がり始めると、一気呵成に福岡ゴールに襲いかかった。中央から、サイドから、どんどん前へ出てくる攻撃に、福岡はゴール前に押し込まれる時間が増えていく。

しかし、いくつかの決定的なチャンスを作られながらも、福岡は粘り強く守り抜く。そして、残り10分からピッチに登場した金森が、ボールを前へ運ぶ姿勢を見せて守備陣に勇気を与えると、選手たちは最後の力を振り絞って前へ向かい、決して下がったままではいないという姿勢を見せる。やがて、4分間のアディショナルタイムが経過。福岡の勝利を告げるホイッスルが本城陸上競技場のピッチに鳴り響いた。

日々感じられるチームの成長
スコアは1-0。終盤は危ないシーンも作られた。しかし、トータルで見れば、福岡が狙い通りに手に入れた勝利だった。新しく監督が代わり、選手を入れ替えたチームの成熟度は決して高いとは言えない。ビルドアップをはじめ、いくつもの課題もある。しかし、相手を綿密に分析し、自分たちの持てる力をどのように出せば勝利が手に入るのかを強く意識して戦う集団は、試合を重ねるごとに成長し、確実に強さを身に付けていることが窺える試合だった。

そして、絶対に勝たなければいけない福岡ダービーも、試合が終われば、それは過去の1試合にしか過ぎない。選手たちはさらなる成長に目を向ける。
「結果を出しながらも、内容も改善していかなくてはいけないところもたくさんある。今日の内容も満足するものでもないし、リードしている状態で、もっと上手く試合を運ぶということも大事。そういったしたたかさを、もっと出していければと思う」(末吉)
次節からは2週間で5試合を戦う連戦が始まる。成長を続ける福岡が、どのような内容と結果を手に入れるのか楽しみだ。

【中倉一志=取材・文・写真】
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