「football fukuoka」中倉一志

【Jユースカップ 準決勝 福岡-G大阪】あと1歩届かなかった決勝の舞台。強敵相手にひるまず戦い続けて残した確かな軌跡

2019Jユースカップ 第27回Jリーグユース選手権大会 準決勝
対戦:アビスパ福岡U-18vsガンバ大阪ユース
日時:2019年11月10日 11:03キックオフ
会場:レベルファイブスタジアム/1,124人
結果:アビスパ福岡U-18 1-3 ガンバ大阪ユース
得点:[G大阪]長尾優斗(39分)、[福岡]田村奎人(46分)、[G大阪]福井和樹(51分)、髙橋直也(90分)

アビスパ福岡U-18は11日、レベルファイブスタジアムでクラブ史上初となるJリーグユースカップ準決勝に挑んだ。立ち上がりからホームのパワーを受けた選手たちは、アグレッシブな姿勢を見せ、先制点を失ってもその姿勢を継続。後半開始早々には田村奎人が同点ゴールを奪った。しかし、その直後に勝ち越しゴールを許すと、試合終了間際にも失点し1-3で敗戦。惜しくも決勝の舞台には届かなかったが、健闘を見せた選手たちにスタジアムに詰めかけた1,000人以上のサポーターから大きな拍手が送られた。

唸った田村奎人の左足
「さあ、行くぞ」。ハーフタイム終了直前、アビスパU-18のロッカールームから響く大きな声がピッチの中のカメラマン席まで届く。先制点を失ってもチームの士気は下がっていない。そう感じた筆者が間違いではないと証明するかのように、ピッチ上の選手たちは後半開始わずか1分でゴールという結果を示した。起点は右サイドのロングスローから。1度はクリアされたが、こぼれ球を拾った田村奎人は冷静に相手DFをキックフェイントでかわすと、視界が開いた先にあるゴールに向かって左足を振りぬいた。
「中に切り込んでのシュートは自分の得意な形」(田村)
ゴールに突き刺した瞬間、一目散にベンチにいるチームメイトのもとへ。自然と喜びの輪が生まれ、スタンドに大歓声が沸き上がる。この日一番の雰囲気に“ホーム”レベルファイブスタジアムは包まれた。

悔やまれる同点後の5分間
だが、プレミアリーグで首位を走るG大阪ユースは強敵だ。同点ゴールから5分後、中盤でボールを失うと正確なスルーパスを通されて2点目を奪われた。自分たちに流れが傾きかけた時間帯に喫した失点に「同点に追いついたあとの数分後だったので、点を取った後にどういうふうに試合を持っていくかというところは課題として残った」と振り返るのは井上孝浩監督。キャプテンの鷹巣直希は「チームとしての気の緩みがあったと思いますし、自分のマークの選手にゴールを取られたので、自分自身も心のどこかでちょっと隙を作ってしまったと思います」と悔しさを滲ませた。

絶対に諦めない。最後まで気持ちを切らさず戦い抜いた選手たち
だが、アビスパU-18は立ち上がる。このチームの良さは失点しても絶対に下を向かないこと。失点後は必ずピッチにいる11人全員が集まり、自分たちのやるべきことを再確認。そして再びファイティングポーズを取る。さらに途中交代で入った選手もチームを活性化する。それを象徴するプレーは86分。ロングスローを受けた途中出場の石井稜真が起点を作り、同じく途中出場の田代鉱希にパスをつなぐと、最後は攻め上がったボランチの藤原尚篤がシュート。惜しくもゴールにはつながらなかったが、ホームの大声援に乗って「全員攻撃」で最後まで果敢に攻め続けた。

この大会で得たものを次なる舞台プレミアリーグへ
残念ながら、あと一歩が及ばずに1-3の敗戦。しかし、クラブ史上初のベスト4を成し遂げたことは胸が張れる結果だ。

ここまでの道は決して平たんなものではなかった。2回戦は接戦の末に水戸ユースに勝利。続く3回戦では試合終了間際に同点に追いつき、延長戦の末、徳島ユースを振り切ってベスト8に進出。準々決勝では鹿島ユースを下した。厳しい戦いを制しながら、選手たちは確実な成長の跡を見せた。

そして迎えた準決勝の相手はG大阪は、今季のプレミアリーグでは2試合とも大量失点を喫して敗れた相手。だが選手たちはひるまず、堂々と最後まで渡り合った。その理由を、チームとしてボールポゼッションの部分での成長があったからだと井上孝浩監督は話す。
「これまで戦ってきている中で、これをやらないと勝てないというのは、選手がピッチの中で目の当たりにしてきた。全然ボールを持てずに守備一辺倒になってしまっていた(プレミアリーグのホームでの)1-8で負けたG大阪戦を振り返ったときに、これではいけないというのは選手たちも感じていたところ。そういうのをビデオで見せて、『こんな失い方をしていては試合にならないよ』というのを話した中で、選手がそれを理解し、取り組んだ成果じゃないかと思う」

前述の精神的な強さに加え、技術的にも、チームとしての成長に確かな手応えを得た今大会。それを糧にして、アビスパU-18は次なる目標をプレミアリーグ残留に置く。現時点での順位はプレミアリーグWESTで9位。残留圏の8位まで勝点差1に迫っている状況で残り4試合を迎える。
「自分たちは絶対にプレミアリーグに残留するので、その試合もできれば多くのサポーターに見に来てくれればと思っています」(鷹巣直希)
アビスパのエンブレムを胸に戦う選手たち。その雄姿に、ぜひ、声援を届けて欲しい。

【今後のプレミアリーグ日程】
11/13 15:00KOvs名古屋グランパスU-18(福岡フットボールセンター 人工芝A)
11/23 13:00KOvs愛媛FCU-18(愛フィールド梅津寺 人工芝グラウンド)
12/1 11:00KOvs東福岡高校(東福岡高校グラウンド)
12/8 13:00KOvsサンフレッチェ広島F.C.ユース(福岡フットボールセンター 人工芝A)

[武丸善章=取材・文・写真]
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ