【サッカー人気3位】今季初のマルチゴールで勝利、両チームの策でフェーズが切り替…

石井紘人のFootball Referee Journal

Jリーガーたちの過酷な実情 年俸下限なしで月給10万円以下も、平均引退年齢25歳…【ビジネスジャーナル】

1993年発足時のブーム以降、人気低迷が続いたJリーグ。2007年から08年にかけて、アジアチャンピオンズリーグを浦和レッズとガンバ大阪が制覇したことで、人気復調の兆しが見えたが、その後が続かず。近年では、テレビ地上波でのJリーグ試合中継が減り、テレビに取り上げられたかと思えば、元Jリーガーの不祥事だったりする。華やかなイメージとは程遠くなってしまったが、実際には徐々に人気は復調しているのだ。

例えば金銭面。

実は、J1リーグの選手たちのほとんどが2500万円近い年俸をもらっている。フォルラン、闘莉王、中村俊輔など有名な選手たちは1億円以上だし、Jリーグファン以外の知名度は決して高くない中村憲剛も、1億円を超えているといわれている。選手の代理人の方々の話を聞いてみても、Jリーグの景気の良さに驚く。サンフレッチェ広島F.Cのミキッチが、スポーツ誌「Number」(文藝春秋)の取材に「運営や給料面で問題のある海外のチームに、なぜ移籍するのかわからない。Jリーグより下のクラブに移籍する必要はあるのか」と答えていたのは大言ではない。

しかし、それは、“一部”のクラブだけの話でもある。

 

  • 最低賃金保証はない?

現在、JリーグはJ1とJ2合わせて40チーム。J3も含めると51チームになるが、前述した平均2500万円の年俸を支払えているチームは、この中で13チーム程度である。その他のチームが加わると、J1でも平均年俸は半減する。「J2、さらにJ1下位も悲惨だ」と大学サッカー関係者は教えてくれる。

 

「『Jリーグには最低賃金保証制度がある』なんていわれていますが、それはシステムをよく理解していない人たちの発言で、『プロA契約のみ』です。新卒入団後に所定の出場時間をクリアしていない選手を対象とする『プロC契約』の上限は480万円ですが、下限はありません。

つまり、年俸200万円のJリーガーが存在しても違反ではないのです」

 

この「プロC契約」が適用されるのが、大卒生たちである。クラブが大卒選手を獲得してくる大抵の理由が、“お試し”やけが人が出た時の要員である。そのため、Jリーガーになっても、『プロC契約』以上の契約を勝ち取るのに必要な900分の出場時間(J2の場合)を超えることができない。

もちろん、加入してから4年がたてば、クラブの運営側は「プロC契約」以上の条件で選手と契約しなければならないため、その前に戦力外通告をする。そういった悪しき風潮があり、Jリーガーの平均引退年齢は25歳前後になる。

 

そんな現状を変えるべく、大学サッカー指導者たちは自ら対策を考えている。

「日本サッカー協会(JFA)によって編成される20歳以下の日本代表チーム、U-20に選ばれるような即戦力ならば別ですが、基本的には高校を卒業した後は、大学に進学させる流れができていますね。大学に入ってから、この先、サッカーで生きていくのかを決めればいいし、特別指定選手(大学に所属しながらJリーグの試合に出場できる制度)で経験も積める。体育大学であれば、Jリーガー引退後も役に立つ教員の資格をとれる。

 

私たちは、選手たちに対し、大学卒業後の進路として必ずしもJリーガーを勧めません。その代わり、日本最高峰のアマチュアサッカーリーグ、JFLという道も提案します。

JFLのチームに入ったほうが、Jリーガーになるより収入面で恵まれることも多く、年金などの保証もある。退職金だってあります。

もちろん、好条件を提案されればJリーグを勧めますが、現実はそうではない。Jリーグが声をかけてくる選手なら、JFLのチームに話をすれば、JFLも条件を提示してくれる。両方の条件を見せて、将来的な話を選手にします。けれど、選手たちは、過酷な契約条件でも、やはりJリーガーを目指しますね」

 

選手たちのサッカーへの思いが、皮肉なことにも過酷な労働環境を助長してしまっている。「J3が最たる例だ」とサッカー関係者たちは口を揃える。

 

ちなみにJリーグには、無報酬のアマチュア契約も存在する。

これは11年に、水戸ホーリーホックが鈴木隆行と結んだことで話題になったが、同クラブの懐事情を知っている鈴木が、自ら申し出た契約である。

 

元日本代表選手は、現役続行を希望していたが、「あるJ2クラブから提示された金額が月で10万円で、プラスで勝利給程度だった。それを見て『これが俺の価値か。潮時だな』と引退を決めました」と語ってくれた。Jリーガーには夢がある。その半面、それ以上に過酷な現実があることも忘れてはいけない。(2014年4月19日掲載の元原稿になります)

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