川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】#ヴァンラーレ八戸 のルーキー #相田勇樹 を知っていますか?【コラム】

【コラム】ヴァンラーレ八戸のルーキー相田勇樹を知っていますか?

札幌大学から加入したルーキー・相田 勇樹を知らない人は、いまのうちに彼のプレーを記憶にとどめ、名前を覚えておいた方がいい。これは決して過剰な表現ではない。ヴァンラーレ八戸が上昇気流に乗れたことと相田のプレーは無関係ではない。相田にとってもチームにとっても転機を迎えたのは6月13日の明治安田生命J3リーグ第11節のY.S.C.C.横浜戦[3〇0]だった。

6月6日のJ3第10節のテゲバジャーロ宮崎戦[0●2]までサブメンバーの一員だった相田が、YS横浜戦からスタメンで起用される。これには、ある事情が関係していた。6月8日のクラブから発表された「5選手への処分について」により、相田と同じポジションの選手が欠場を余儀なくされる。そこからYS横浜戦で先発起用されるのだが、この試合の相田のプレーは、それまでに見られなかった八戸に欠けていた部分が見られた。それは、葛野昌宏監督が選手に求めていたプレーだったに違いない。監督は当然、相田を6月16日に行われた天皇杯2回戦の横浜FC戦[2〇1]でも起用する。

J3第11節のYS横浜戦で、相田はどんなプレーを見せたのか。

6分45秒からのプレー(YouTubeでは50秒過ぎ)に注目してもらいたい。相田はドリブルでペナルティエリアに進入しようとする。しかし相手の守備に阻まれ、ボールが足下から離れる。そのボールを丸岡 悟が拾って、右から左にスライドしながらドリブルしてシュートを狙う。この時、相田は丸岡がシュートしやすいように、身体を張って相手選手をブロックする。身を挺し、丸岡のシュートコースを作り出そうとした。

さらに43分40秒のシーン(同1分40秒過ぎ)。前澤 甲気がロングシュートを決めて3-0になった場面は、相田のプレスから始まっている。YS横浜の選手が後方でボールを回している。相田は自分の近くにいる選手にボールが渡ると確信し、すばやく背後からプレスに行く。相手が味方のDFにボールを戻そうとした瞬間、身体を付けて後ろからプレッシャーを掛ける。相手は背後から身体をぶつけられ、パススピードが落ちてしまう。中途半端なスピードのパスをインターセプトした前澤がボールをゴールに叩き込んだ。

身を挺してシュートコースを作り出す。味方が前からプレスに行くことを考慮して相手にプレッシャーを掛ける。2つのプレーとも、相田のアシストとは記録されていない。そのため、とても地味なプレーに映るかもしれないが、こうした気の利いたプレーを、自分の身体を張ってやり切る強さを、私は見た。

7月4日に行われたJ3第14節・藤枝MYFC戦[1〇0]でも、相田のサッカーセンスが光った。この試合の決勝点は島田 拓海のシュートから生まれたのだが、アシストは相田だった。おそらく自分にパスがきたらすぐに、相手DFの頭を越したラストパスを出そうと決めていたように映る。島田がDFの裏を狙おうと、相手と競い合っていたため、グラウンダーのパスよりも山なりのパスを出す方が、得点の確率が高いと読んでの選択だろう。

コラムの冒頭で「それまでに見られなかった八戸に欠けていた部分が見られた」と私は書いた。言い方を換えれば「献身さ」の一言に還元できる。相田が、これからどんなプレーを見せてくれるのか、とても楽しみだし、もっともっと貪欲になって、レギュラーの座を守り通してほしい。

川本梅花

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