J1第7節全試合振り返りLIVE(J論)【3/31(月)22時】

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鬼木新監督を迎える鹿島に注目する理由 月イチ連載「大人になった中坊コラム」

【中坊(ちゅうぼう)プロフィール】
1993~2023年のスタジアム観戦数は962試合。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。
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 2025シーズン、鹿島アントラーズは新監督として鬼木達を招聘した。川崎フロンターレ監督時代は、国内タイトルを獲り尽くした名将であり、現役時代は鹿島でもプレー。古巣に戻って、満を持しての監督就任となった。

 この人事、個人的には「鬼木監督で最低2年間、鹿島のフロントは我慢しきれるのか」という点で注目している。鹿島のリーグ戦成績は、優勝した2016年以降は以下の通りだ。

2017年:2位
2018年:3位
2019年:3位
2020年:5位
2021年:4位
2022年:4位
2023年:5位
2024年:5位

 8年間にわたって上位をキープし続けている。見事な成績に思うだろうが、常にタイトル獲得が求められている「常勝」鹿島にとっては、8年間にわたって国内タイトルとは無縁の「暗黒期」と捉えるサポーターも存在する。

 かつて鹿島に在籍した金崎夢生は「鹿島は『優勝がノルマ』みたいな位置づけで、絶対優勝しないといけない、最低目標みたいだった」と語っていたほど。

 したがって、リーグ優勝は至上命題であり、それを託されたのが鬼木監督、ということになる。新監督について言及する前に、前々任の鹿島の指揮官である、ランコ・ポポヴィッチについて振り返りたい。

 2024年10月6日、鹿島はポポヴィッチ監督の契約解除、そして吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)の退任を発表した。

 退任時点でリーグ4位。そして直近のリーグ戦では、アルビレックス新潟に4-0の快勝だった。そのため(鹿島サポーター以外からは)、衝撃の人事として受け止められた。なぜ契約解除? この成績ならば、来季も契約更新ではないのか?

 ただ、この驚きはあくまで「当事者以外」であり、吉岡FD退任に驚きをもって受け止めている鹿島サポーターは、過半数を超えるほどではなかった。自分は第三者の視点で、この契約解除については理解でき、致し方ないものと受け止める。

 まず大前提として、吉岡FDの就任以降、鹿島は3季連続国内無冠であり、もう後がない状況であったこと。ここが重要なポイントである。

 吉岡FDは、レネ・ヴァイラー(2022年)、岩政大樹(2022年途中-2023年)と、招聘した監督で失敗を重ね、後がない状況。そんな中で連れてきたポポヴィッチでも、2024シーズンは無冠が確定したため、吉岡FDの責任が問われるのは当然。また、吉岡FDの退任が確定したならば、招聘したポポヴィッチも同時にクラブを去る。ここまでは当然の流れである。

 FDと監督の退任はセットであり、どちらか片方がクラブに残る選択肢はなかったものと思料。つまり、ポポヴィッチ契約解除が先ではなく、吉岡FDの退任が先に来て、それに伴う同時契約解除が今回の人事であると認識している。

 ブラジル路線という、クラブの伝統から大きく異なるヨーロッパ(スイス)の指導者であるヴァイラーで失敗。クラブOBの岩政で失敗。最後は大分トリニータ時代のコネクションでポポヴィッチを呼び、傍から見たらこれが最後のチャンスだった。吉岡FDからしても、ポポヴィッチは最後の切り札だったのだろう。

 そのラストチャンスで無冠が確定したならば、退任は必然。「常勝」鹿島で3年間も無冠は許されない。

 天皇杯、準々決勝のヴィッセル神戸戦。鹿島は主力で挑んだにもかかわらず、完全控えメンバーの神戸に0-3で完敗。そしてリーグ戦では、残留争い中の湘南ベルマーレに0-2から3-2という、鹿島の歴史においてかなり珍しい大逆転負けを喫して、優勝争いが絶望的な状況となった。

 何より、今季は主力固定で引き出しがないがゆえに、その主力を酷使した結果、サイドバックの濃野公人が残りのシーズン絶望の大怪我となった。これが退任直前の1カ月、立て続けに起きた事象である。

 リーグ優勝は絶望的、ルヴァンは3回戦敗退、天皇杯はベスト8敗退に終わり、またも無冠確定の状況。結果もさることながら、内容的にも主力固定で引き出しが無く、今後の積み上げも期待できそうにない。

 そうした状況を踏まえると(契約解除のタイミングについては議論の余地はあるものの)、どうあがいても1年限りでの首切りコースなのは確定だと思っていたし、実際にそうなったことについても納得をもって受け止めている。

 ついでに言えば、ポポヴィッチについては過去、FC東京においてもセレッソ大阪においても「長期政権を任せられるほどの実力を持つ監督ではない」というのが自分の評価。鹿島としても、ここが限界だったと認識している。

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