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【無料公開】「私たちが横河武蔵野です」に込められた心情(2024年6月8日@ムサ陸)

 国立競技場でJFL最多入場者記録が更新された翌日の土曜日、久しぶりに武蔵野陸上競技場を訪れた。東京武蔵野ユナイテッドFC改め横河武蔵野FC、そして鈴鹿ポイントゲッターズ改めアトレチコ鈴鹿による一戦。さっそく試合を写真と共に振り返ることにしよう。

 

 アトレチコ鈴鹿の前は「鈴鹿ポイントゲッターズ」、その前が「鈴鹿アンリミテッドFC」、その前が「FC鈴鹿ランポーレ」。ホームタウンが名張だった時代も3回クラブ名を変更している。これほど目まぐるしく名称が変わったクラブは、他にはないだろう。

 一方の横河武蔵野FCは、2015年に将来のJリーグ入りを標榜して「東京武蔵野シティFC」となり、さらに2021年には東京ユナイテッドFCの運営会社と提携することで「東京武蔵野ユナイテッドFC」となった。そして今季、10年ぶりに「横河」に原点回帰。「ユナイテッド」を解消してクラブ名が戻った事例というのは、これまた他にないのではないか。

 無人のバックスタンドに、とても気になる横断幕が掲げてあった。「私たちが横河武蔵野です 昔の名前で出ています」──。

 おそらく、私と同世代くらいのサポーターの手によるものだろう。「昔の名前で出ています」という一文には、かつてのクラブの迷走ぶりを暗に揶揄しているようにも感じられる。けれども「私たちが横河武蔵野です」には、原点回帰の決断を快く受け入れようとする心情が読み取れた。

 ハーフタイムに登場した元日本代表の李忠成さんは、古巣の印象を聞かれて「雰囲気は変わっていないですね」という趣旨のコメントを残している。今は上を目指しているわけではないし、洗練されているとも言い難いし、たくさんのファン・サポーターがいるわけでもない。それでも長年にわたり「横河武蔵野」の名前に愛着を持つ人は、一定数存在する。

 試合前日、クリアソン新宿の国立開催の試合が、金曜日にもかかわらず1万6480人もの観客を集めた。それはそれで、素晴らしいことだと思う。けれども武蔵野のような、のんびり楽しめるクラブもあっていい。久々のムサ陸での取材で、そんな思いを新たにした。

<この稿、了>

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