宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】RIOを振り返り、TOKYOを想う 千田善×篠原美也子×宇都宮徹壱鼎談<1/2>

 世の中はすっかりお盆休みモード。当WMも「形ばかりの夏休み」をいただくことにしよう──。ということで、今週は過去のアーカイブ記事を無料公開することにしたい。時節柄、何がいいかなと思って引っ張り出してきたのが、今から3年前の8月31日に掲載した、こちらの鼎談記事。ご登場いただいたのは、国際ジャーナリストで通訳・翻訳者の千田善さん、そしてシンガーソングライターの篠原美也子さん。千田さんと篠原さんは、メルマガ時代に連載コラムを担当されており、その流れでのご登場となった。

 鼎談のテーマは、閉幕直前のリオデジャネイロ五輪について。日本が過去最多のメダルラッシュに沸いた大会を振り返りつつ、4年後の東京五輪についても語り合う内容になっている。その東京五輪が閉幕するのは、2020年の8月9日。ちょうど来年の今頃、われわれは国民的な虚脱感に浸っていることだろう。それが心地よいものなのか、それとも苦渋を伴ったものなのか、来年になってみないとわからない。とりあえず前回大会は、どんな余韻だったのかを思い返す機会となれば幸いである。(収録日:2016年8月21日@東京)

編集部註:掲載当時と競技名が変更になっているものもありますが、当時の名称にて再録しています。

<目次>

*リオ五輪、それぞれの楽しみ方

*「いちおう」手倉森ジャパンを総括する

*ドーピング問題、ビデオ判定、吉田沙保里

*日本のメディアの伝え方について

*「地獄のような日々」の是非

*リオ五輪の向こう側に

リオ五輪、それぞれの楽しみ方

――早いもので、17日間にわたるリオ五輪も、あとは男子マラソンと閉幕式を残すのみとなりました。SNSを拝見していると、おふたりとも今大会を随分と楽しんでおられたようですが、篠原さんには「雑食スポーツウォッチャー」の視点から、そして千田さんには国際政治の視点から、それぞれ今大会を振り返っていただきたいと思います。まずは篠原さん、HPの「夏休みの絵日記」シリーズ、楽しく拝見していましたが、本当に相変わらずの雑食ぶりですね(笑)。

篠原 徹マガで連載を持っていたときは、ソチ五輪はあったけれど夏はなかったんですよね。でも私はもともと五輪が大好きだし、今日も近代五種とか見ちゃって「馬術、すごい!」と盛り上がっていました(笑)。もちろんワールドカップも大好きですけど、毎日、ずっとTVで何かしらスポーツが観られるというのは本当に幸せ。夜中に予選を観て、いったんソファーで寝落ちしてから午前中の決勝を観て、それが終わったら午後はリピート放送でマイナー競技を観て。この2週間、1回も布団で寝てないという(笑)。それくらい今回の五輪は、がっつり楽しませていただきましたね。

――すごいですね(苦笑)。千田さんも今日は女子バレーのセルビア対中国の決勝を観ていて、寝られなくなったそうです。

千田 そうそう。徹夜で朝まで翻訳作業をしていて、寝ようかなと思ったところに始まったのね。バレーの女子はセルビアが中国に負けて銀だったんですけど、男子バスケットボールでもセルビアが決勝に進出したし、男子水球のベスト4にはセルビア、クロアチア、モンテネグロにイタリアと、まるで「アドリア海大会」みたいになっていたし(笑)。こっちはセルビアが優勝したんだけど、その水球王国に日本が挑んで第1ピリオドを取ったのはすごいと思いましたね。

篠原 そのあとはメッタボコにやられちゃったんですけど。

――あらためて旧ユーゴ系の球技の強さを実感しましたよね、今大会も。

千田 旧ユーゴ系はサッカーやバスケをはじめ、もともと球技は強いですけれど、最近はクロアチアがトラック&フィールド(陸上競技)で頑張っていますね。走り高跳びとかやり投げとか、いずれも女子でしたけど。

――球技といえば、日本も頑張っていましたよね。女子バレーは残念でしたが、卓球の男女、テニスの錦織圭、そしてバドミントンの女子でメダルを獲得しました。テニスといえば、篠原さんは錦織とナダルの3位決定戦、どっちを応援していたんでしょうか?

篠原 もちろんナダルですよ(笑)。錦織くんが発展途上だった時代は「まあ、応援しているけど、やっぱりナダルが勝つよね」っていうスタンスでしたけど、今はもう拮抗しているので、ここはナダル、悪いけどナダル(笑)。

――千田さんが大会期間中、注目していた競技や選手というのは?

千田 僕はやっぱり旧ユーゴ諸国の動向をチェックしていたんですけど、水球の決勝とか日本が絡まない競技はほとんどTVではやらないんですよね。ちょっと前まで、日本は陸上でほとんどメダルが取れなかったから、いろんな国の選手の競技を見ることができたけど、今大会はメダルラッシュでしたから気が付けば日本ばっかりでした。

――男子400メートルリレー決勝に日本が出て、しかも銀を取ってしまう時代になりましたから、隔世の感があります。現時点でのメダル獲得数は、スポナビによると、金が12、銀が8、銅が21。これ、前回のロンドン大会の記録(38)を更新する最多記録ですよね。

篠原 ロンドンが過去最高って言っていましたね。日本にとっての夏の五輪って、柔道のヤワラちゃん(谷亮子)のメダルから始まって「おっしゃー!」ってなるけれど、大会を折り返して陸上には日本がなかなか(メダルに)絡めないという感じでしたが。

千田 それが今大会は最後まで山場があったよね。

篠原 日本人も頑張ったし、ウサイン・ボルトも素晴らしかったし、結局最後までたっぷり楽しませてもらえました。

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