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【無料記事】U-20ワールドカップ盛り上げ隊が残したもの(徹マガバックナンバー) ちょんまげ隊長ツン&上野直彦インタビュー<1/2>

■スイス代表と被災地の子供たちとの交流

——何やら残念な話が続きますが、ノルウェーはいい感じだったんですよね?

ツン ノルウェーはスイスと同じくらい対応が良かったですね。大使代理の人と面会できたんですが、L・リーグにリンダ・メダレンっていたじゃないですか。その彼女と、陸軍士官学校時代の同期だったらしい。そこで一緒にサッカーをやって、男の守備陣全員を切り返してゴールを決めた、なんていう話も聞きました。

——メダレンと言えば、L・リーグ最強の助っ人外国人選手で、95年ワールドカップ優勝した時の10番でキャプテンでしたよね。それはすごい!

ツン 大使代理はサッカー大好きで「貴方たちの言うことはわかった。こちらでも、いろいろ提供させてもらう」と言ってくれて、国旗を提供してもらったり、ピンバッジをもらったり、本当に有難かったですね。

上野 駒場のドイツ戦は残念な結果でしたけど(0−4)、大使代理も来ていて、試合の解説もしてくれました。すごく良いつながりができましたね。

——今回、コンタクトが取れた大使館の中で、ノルウェーと並んで、やはりスイスが一番思い出に残ったと思います。いかがでしょうか?

ツン スイス大使館は、僕と上野さんで行ったんです。そしたら、日本語を喋れるスイス人が出てきて(笑)。

上野 その人が、アレクサンダー・レングリさんなんですよ。この人本当に品のいい方で、ジェントルマンですよね。しかもサッカーが大好きなんですよ。で、その時に僕らが注意していたのは、「まず、JFAとは関係ない。全くプライベートな団体で有志の集まりです」と説明して。

ツン そう、それはちゃんと言っておかないと、僕たちがJFAの名を騙ってやっていると思われると困るから。まずは大きな声で「僕たちは勝手にやっています!」と。サポーターとかライターさんとか、そういう集まりなので、JFAとはまったく関係なく大会を盛り上げたいんです、というところから入ります。

上野 で、最初に言った「集客、感謝、応援」に加えて「(被災地)支援」というのを入れたんです。というのも、ツンさんは東北の被災地に30回近く行っている実績があるから、代表チームと被災地の子供たちをつなげることができると。実際、そういうお話をしたら、言葉は悪いですけど、大使館としてもすごく食いつきがいいわけですよ。

——なるほど。スイス代表は宮城で試合があったから、実際に選手たちは東北の子供たちと交流ができたわけですね?

ツン そう。で、僕たち実動部隊としては動いてなんぼですから、まずは大会初日の8月19日に、被災地の子どもたちを招待したんですよ。その時に上野さん経由で、スイス大使館から応援グッズをもらったんです。子供たちは日本戦を応援する予定だったんですが、スイス大使館からいろいろもらったから「スイスの選手に寄せ書きしない?」って子供たちに言ったら「やろう!」という話になって。

——あの時は地元の子供たちが、スイスに声援を送っていましたね。

ツン それこそ、津波で家を流されてしまったような子供たちが、ずっと「ホップ・スイッツ(がんばれ、スイス)!」って声援を送っていて、僕も「これ絶対選手に聞こえているぞ、みんな頑張ろうぜ!」って励まして。それがスイスとのファーストコンタクトですよ。

——結局、子供たちの寄せ書きは無事に届けられたんですか?

ツン 試合直後はダメでしたね。セキュリティの人に聞いてみたら「FIFAのレギュレーションで、選手との接触は一切できないから」って言われて、やっぱそうですよね、ということになって。その後、スイスが練習しているところに行って、通訳の人に事情を話したら「だったら、直接渡したほうがいいですよ」という話になったんです。

——杓子定規な人もいれば、ちゃんと話がわかってくれる人もいるわけですね。それで、どうなりました?

ツン 僕たちは横断幕を掲げておいて、選手が出て来るのを待っていました。そしたら練習を終えた選手たちに、通訳の人が「この前の試合で応援してくれた子供たちの寄せ書きを持ってきてくれました」って言ってくれて、選手全員が「うわあ!」って拍手してくれたんです。監督も「あの声援は聞こえたよ」と言ってくれたし、選手は国旗やボールにもサインをしてくれて、なおかつ記念撮影もしてくれたし。

上野 本当にあの時は嬉しかったですね。

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