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【無料記事】「イエス! イエス! イエス!」のブリオベッカ浦安 今日の現場から(2016年4月24日@ムサリク)

4月最後の日曜日、JFLファーストステージ第8節、東京武蔵野シティFCとブリオベッカ浦安のゲームを取材してきた。この試合については、別媒体でコラムを書く予定なので、今回は短めに。

ビジターチームの浦安は、昨年高知で行われた地域決勝・決勝ラウンドで取材して以来、個人的に気になるチームであった。以前、徹マガの巻頭コラムでも書いたが、このクラブは最初から「上を目指していた」わけではない。千葉県の3部リーグから徐々にカテゴリーを上げていき、頑張った先に「アマチュア最高峰」の舞台があった。今季、初めて全国リーグを戦う彼らにとり、武蔵野は同じ関東リーグを出自とする大先輩。現時点での順位は、浦安9位で武蔵野11位だが、戦力的にも経験値でも相手が格上であるのは明らかだった。

ところが結果は1−1のドロー。ほとんどの時間帯でゲームを支配した武蔵野は、前半30分に寺島はるひのゴールで先制したものの、その後は浦安の身体を張ったディフェンスに阻まれて、なかなか追加点を奪えず。そしてゲーム終盤は浦安の必死の反撃に受け身に回り、後半43分に竹中公基のゴールで同点に追いつかれてしまう。ちなみに武蔵野のシュート数が10本だったのに対し、浦安はわずかに2本であった。

今季の開幕前、浦安の齋藤芳行監督に「JFLではどんな方針で臨むのか」と聞いたことがある。指揮官の答えはいたってシンプル。「みんなの個性が出せるサッカーを目指しているけど、その前提となるのが『しっかりしたディフェンス』。つまり相手ボールを30回奪えれば、好きな攻撃が30回できるよ、という考え方ですよ(笑)」。この日の試合前、9位という順位について尋ねたときも「ここまで1試合平均で1失点。これを0.5点にまで減らしていきたいね」と、やはりディフェンスを重視したコメントを残している。

浦安は、昨シーズンの関東リーグでは圧倒的な力を誇っていたが、「まずディフェンスありき」の方針は当時から変わっていない。主力選手の顔ぶれも、やはり昨シーズンからほとんど変わっていない。おそらく浦安は「無理せず、どこまでJFLで戦えるのか」というチャレンジを、あえて続けているのではないか。だとするならば、戦力と経験ではるかに上を行く武蔵野に終盤で追いついたことは、彼らにとって大きな自身となったことだろう。

ところでこの試合、浦安のサポーターは自軍が攻撃に転じたときに「イエス! イエス! イエス!」という実にユニークなコールをしていて、妙に耳に残った。初めての全国リーグだからといって、決して気負うことなく、これまでのスタイルを変えることもなく、自分たちができることを愚直に貫いて得られた勝ち点1。浦安にとっては、まさに「イエス! イエス! イエス!」と言いたくなる内容と結果であった。

<この稿、了>

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