J3番記者座談会LIVE(J論)【4/17(木)21時】

中野吉之伴フッスバルラボ

【きちの挑戦】これ以上できないと思い悩むこともあるけど、それでも僕はやっぱりサッカー指導者でありたい②

(前回から続く)

▼ サッカーと生きるベースの考え方

ドイツのグラスルーツスポーツは基本的にどこも、誰もボランティアがベースであり、それが僕らの美徳でもある。

どんなに小さな村にあるサッカークラブでも持ちグラウンドとクラブハウスがあり、多くのクラブには天然芝と人工芝のグラウンドがある。

うちのクラブであれば子ども1人年会費60ユーロ。日本円で10000円にも満たない。改めて強調しよう。月謝ではない。入会金もない。1年間にかかる費用がそれだけなのだ。追加で大会参加費を払うことも基本的にはない。遠征費が次々に請求されるということもない。というかそもそも僕らはそんなに遠征にもいかない。合宿をしたりはするけど、年に何回もしたりはしない。

小さな子どものころから週に2回のトレーニングがあって、週末には年間リーグ戦が組まれる。その年間スケジュールを誰もが楽しめるのがグラスルーツスポーツにおいて一番大事というのが昔からの伝統であり、美学なのだ。

だからそれ以上のお金をとろうとはしない。じゃあクラブの運営費や維持費はどうするの?となるが、それは行政や地方スポーツ協会からの補助金で相当カバーできるというのがドイツのスポーツにおけるすごいところでもある。

指導者にお金を出すこともなかなか難しいから自然とボランティアで関わることが当たり前になってくる。となると「ボランティアでやってやってるんだ」「俺がやらないと困るんだろ?」という横柄さが生まれたりもしないだろうかという疑念も浮かぶだろうが、サッカーを好きな人がサッカーを通じて子どもたちと関わるのはそれだけで喜びなのだ。そして子どもたちを通じてサッカーを楽しめることはそれだけで幸せなのだ。自分のプライベートの時間を使って過ごしたいものなのだ。互いに支え合ってバランスを取り合い、サッカーと生きる時間をみんなで作り出す。それが最高に最幸なのだ。

だから僕にしても20年間なんの文句も不満もなく、ボランティアで指導者をやり続けている。

▼ ボランティアのメリットとデメリット

ただ、そのバランスが崩れてくるとさすがにどこかでひずみが生じる。一人が抱える負担が増え続けると間違いなく無理が生まれる。僕が何チーム持とうとあくまでもボランティアの指導者なのだ。

週の練習が増えようが、週末の帯同試合が増えようが無償での活動だ。週末の試合が増えるということは取材に出られる機会だって減ってくる。取材に出る機会が減れば、僕ならではの現場からの記事を書く機会も減って、収入減にダイレクトでつながる。

加えて前回のコラムで書いたように、いまは取材に出れば仕事が増えるわけではないこともあって、自分は果たして何を何のためのやっているのか迷子になってしまったりもするだろう。

そんななか育成部長からのサポートも受けられないで一人で背負いこむことばかりが増えてきたら、さすがに夏休み後のドイツの空色のように心がどんより曇っているのを感じ続けてしまう。

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