【ゆきラボ】社会への第一歩、ドイツの高校生の職業研修とバイト
こんにちは!ドイツの日常コラム「ゆきラボ」です。
先日、長男の学校で行われた保護者会。メインテーマは「ソーシャル・プラクティクム」についての全体説明会でした。プラクティクム(Praktikum)は職業研修とか現場実習という意味の言葉ですが、実施される期間や内容は状況によって様々です。
例えば、専門学校に通って資格取得を目指している人は、一定期間、関連する業界でプラクティクムをするのが必修となっている場合が多いです。また、私たちの通うバーデン・ヴュルテンベルク州の学校では、日本の中3~高2(学校によって違います)に相当する年齢で、最低5日間(5営業日)のプラクティクムを受けることが必修カリキュラムとなっています。
イメージ https://www.photo-ac.com/
長男の通う学校では、10年生(高校1年生)でまず2週間、自分の興味のある職場で“BOGY”と呼ばれるプラクティクムを受けます。これは「仕事を選ぶとは、働くとはどういうことか」を実地で体験してくるのが目的なので、受け入れ先から書面でOKが出ており、ドイツの労働基準法に抵触しない職場であれば、基本的にはどんな仕事でも体験できます。
長男は、こちらは昨秋にすでに経験済。パソコンの自作やカスタマイズが趣味の長男は、その道の専門店で週5日×2週間の研修をさせてもらうことができました。周囲の話を聞くと、金融系に行った子、医療系に行った子、ゼネコンに行った子もいれば、接客・販売業にチャレンジした子も、大学の研究室に行った子もいます。未成年なので、深夜の仕事や重い肉体労働、タバコやお酒を扱う仕事などには就けませんが、それ以外の制限は特になく、何でも良いようです。仕事の探し方を教わるため、ハローワークにも行きました。
これに対して、今年の秋に予定されているソーシャル・プラクティクムは、主に福祉や医療などの分野で2週間の職業研修を受けるよう、分野が限定されています。先日の保護者会で説明があったのは、このカリキュラムについてでした。自分の得意や興味を仕事につなげてみる、というのが昨年の“BOGY”の趣旨だったのに対し、ソーシャル・プラクティクムの趣旨は「世の中には自分とは違う困難を抱えて生きている人がいる、ということを知る」ことにあるのだそうです。
身近なところに当事者がいない限り、10代の若者には、「ここに支援を必要とする人がいる」という気づきは、確かに得にくいものなのかもしれません。全員が全員、学校を卒業したあと、ケアを必要とする人たちと関わり合うような職業に就くとも限りません。かつては男性には兵役や社会福祉活動の義務がありましたが、現在ではそれもなくなりました。意識して機会を作らないと、自分と同じような環境で生きている人同士としか関わらずに大人になってしまうのかもしれません。
社会に出ていく前に、ケアを必要とする子どもや高齢者、心身に障害や病気を抱えた人、生活困窮者や難民などと関わる経験を一度はしてほしい、というのが、教育現場の切実な願いなのだと思います。
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個人的には、例えば幼稚園や保育園で実習する場合にはインクルーシブ教育を実施しているところが望ましい、という指定があるなど、「社会福祉」の定義がちょっと狭いんじゃないかな?という印象も受けます。どこの幼稚園だって、どこの保育園にだって、本当にいろいろな子たちがいるはずですから。でも、ともあれ、自分とは違う目線で世界を見ている人たちと一緒に生活するのは、とても貴重な経験になるのではないでしょうか。
後半も、プラクティクム=職業研修と、ドイツのお仕事事情の話題を続けます。
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