中野吉之伴フッスバルラボ

国際コーチ会議ではワールドカップにおけるゴールとプレーの特徴、そこから攻守について深く掘り下げられていった

今年の国際コーチカンファレンスの会場となったドレスデンは、エルベの「フィレンツェ」と呼ばれるほど非常に美しい街だ。

世界的に有名なゼンパーオペラ、重厚なバロック建築のツヴィンガー宮殿、第二次世界大戦の空爆での破壊から完全復元された聖母教会など至るところに見どころがある。特に個人的にお気に入りなのが、エルベ川に沿って立ち並ぶ歴史的な建造物の眺めだ。訪れるたびに対岸からただずっと見入り、近場のカフェに座ってコーヒーを飲みながらお気に入りの本を読む。こうした場所での時間が、私は好きだ。ドレスデンのカンファレンス会場はエルベ川沿いにあったので、それだけで気分は盛り上がった。

さて、本題だ。

まず、ドイツサッカーがロシア・ワールドカップでのグループリーグ敗退という歴史的な事実をどのように受け止め、ワールドカップからどのような分析と総括をして、今後にどのような視点を持っているのか。

初日の壇上には、DFBからU21の監督を務めるシュテファン・クンツとU19の監督であるギド・シュトライヒスビアが上がった。はじめは今大会の特徴から触れ、クンツは次のように指摘した。

「新しいトレンドというものは、あまり見受けられなかった。攻撃で非常に目立ったのはCFへ直接ロングボールを送り、セカンドボールを拾う戦い方だ。CFは得点力よりも、まずはその起点となるべき『目的地点』としての役割を担っていた」

これは、全体的な守備位置がどこも深かったことともつながっている。自陣ペナルティエリア付近に守備ラインを設定し、危険なゾーンへのボールの侵入を阻止。そうした守備に対して、ボールを保持しながら押し込んで崩すことはとても困難であり、そのために早い段階で前線にパスを送り、相手が守備を固め切る前に攻め切ろうとする傾向が見られた。

確かにスペインやドイツのようにそれでもじっくり攻めようとする国もあったが、相手の裏を取ってうまく攻め切れるシーンは残念ながらそれほど多く作れず。試合の主導権を握るための戦い方ではなく、相手に主導権を握らせないための戦い方が結果として多く勝ち残ることとなった。

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