「football fukuoka」中倉一志

J2第32節 福岡-札幌プレビュー

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2015明治安田生命J2リーグ第32節
対戦:アビスパ福岡vsコンサドーレ札幌
日時:9月20日(日)13:00キックオフ
会場:レベルファイブスタジアム

第29節磐田戦以来、約1カ月ぶりにレベルファイブスタジアムにJリーグが戻ってくる。対戦相手は、福岡と同じくJ1復帰を目指すコンサドーレ札幌。そして当日は、アビスパ福岡の20周年記念試合。さらに言えば、井原正巳監督が48歳を迎えて最初の試合でもある。昇格に向けて重要な試合であることはもちろん、様々な想いを胸に迎える試合は、勝利以外の結果はいらない。ウェリントン、坂田大輔は出場停止だが、スタジアムに集う全員の力を合わせて、福岡は勝利を目指す。

難敵札幌を迎える1戦
「どういうふうに来るのか分かりませんが」。井原正巳監督は、雁の巣球技場での定例の囲み会見で、何度も、その言葉を口にした。現在、札幌の指揮を取る四方田修平監督は、1996年から1998年まで日本代表のスカウティングスタッフを務めた人物。フランスW杯では、選手とスタッフの違いこそあれ、ともに戦った仲間でもある。それゆえ、四方田監督の分析力と、それに基づく戦術構築に一目置いているのだろう。順位は福岡の5位に対して札幌の10位。勝点では10の差があるが、井原監督は警戒心を緩めない。

今シーズン、バルバリッチ体制でスタートした札幌だが、思うように勝点を積み重ねられずにバルバリッチ監督を解任。第26節以降、四方田監督が指揮を執る。監督交代後は2連敗スタートとなったものの、以降、天皇杯を含めて3勝3分と6戦負けなし。6試合で2失点の守備力が光る。もちろん、攻撃陣にも都倉賢、ナザリト、内村圭宏ら、能力の高い選手が控える。コンディション不良により都倉の出場は微妙だが、強さと高さを誇るナザリトと、スピード豊かにスペースに飛び出してくる内村の2トップは脅威だ。

そして、この2トップをトップ下で小野伸二が操る。35歳のベテランプレーヤーは、運動量こそ全盛期と比較すれば衰えを感じさせるが、柔らかなボールタッチと、エンゼルパスと呼ばれたラストパスは、いまもなお健在。自分たちの状況と試合の流れを読んで選択するプレーの数々は、少しも衰えを感じさせない。前節の横浜FC戦では、チームのパフォーマンスが上がらない中、セットプレーからゴール前の内村にピンポイントで合わせて、貴重な先制ゴールを演出した。「相手にするには、非常にやりづらい、嫌な選手」と、井原監督は話す。

小野、ナザリトをどう抑えるか
さて、福岡にまず求められるのは、ナザリトをどのようにして抑えるのかということだろう。第3節の対戦時には、ロングボールを多用する札幌に対して高い位置からプレスに行かず、ナザリトにボールが入って来るファーストプレーで激しくチャージ、そしてセカンドボールを拾うことを徹底した。都倉のゴールと終了間際の痛恨のミスから2失点を喫したが、この2つのシーンを除けば、ほぼ狙い通りに守ることに成功している。今回は田村が付くことが予想されるが、どのように対応するかに注目が集まる。

そして小野伸二。札幌はビルドアップそのものには、それほど怖さはないが、小野からの1本のパスには、それだけで局面を変えてしまう力がある。小野に自由にプレーさせないことは勝利への絶対条件と言える。小野から自由を奪うことはもちろんだが、小野へのボールの出所を潰すことが何よりも重要だと言える。そういう意味では、注目されるのはダブルボランチの主導権争い。この争いを制した方が勝利を掴むと言っても過言ではない。

攻撃面においては、ウェリントン、坂田大輔の2人を欠く布陣で、どのように組み立てるのかが最大のポイントと言えるだろう。ウェリントンは攻撃の核。坂田は途中出場の切り札。2人の不在がームに大きな影響を与えることは否定できない。だが、福岡は前向きの姿勢を崩さない。
「チーム力が上がっていることを証明する機会」(城後寿)
「みんな、こういう時のために準備をしてきた。みんなを信頼しているし、出た選手が結果を出してくれるだろうと期待している」(井原監督)
ここまで総力戦で戦ってきた福岡。その姿勢に変わりはない。

新たなスタートートの日 勝利で飾りたい
こうした条件の中で、井原監督が、どのような戦略を立て、どのような采配を振るうのかは非常の興味深い。3バックなのか、4バックなのか。前から行くのか、ある程度、相手にボールを持たせるのか。ウェリントンの代わりに誰を起用するのか。そして最大のポイントと思われる坂田の代役に誰を指名するのか。ポイントはいくつもある。そういう意味では、ここまで「どうやって勝点を取るのか」に注力して勝点を積み重ねて来た井原監督の真価が問われる。

そして、札幌戦は福岡の20周年記念試合。試合前にはOBによるサッカー教室や、20周年記念OBマッチ「ちかっぱめんたいマッチ」も行われ、レベルファイブスタジアムは、いつも以上に福岡一色になる。それは、20年間、チームを支えて来てくれた全ての人たちへの感謝の場であり、積み重ねて来た歴史をベースに、新しい歴史をスタートさせる決意表明の場でもある。その場にふさわしいのは、やはり勝利という結果。いつも以上に一体となったスタジアムで札幌を倒したい。それは、新しいスタートふさわしいJ1復帰に向けての大きな弾みになるはずだ。

【中倉一志=取材・文・写真】
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