無料:山下良美レフェリーはワールドカップに選出されたのに何故J3なの?【記者会見レフェリーブリーフィング前編】
今年11月に開幕するFIFAワールドカップ2022年カタール大会のレフェリーにノミネートされた山下良美レフェリーが、リリースの翌日、日本サッカー協会(JFA)審判委員会の扇谷健司委員長と共にオンライン会見に応じた。
日本には、四級から一級までに約26万人の審判員がおり、Jリーグ担当審判員は約200人。そこからW杯を担当できる可能性があるのは、四年周期で三人のみである。
山下レフェリーは年齢的にもあと二大会、W杯ノミネートの可能性があり、カタールW杯は間違いなく転機となるだろう。
山下良美レフェリー
「審判員の山下良美と申します。よろしくお願い致します。この度、FIFAワールドカップカタール大会に審判員として選出して頂けたことを大変光栄に思っています。皆様には心からの感謝しかありません。日本人としての誇りと責任を胸に、大会成功に向けて自分自身にできる最大限の準備をそれに向けて致します。」
―喜ばしい一方、戸惑いなどがあると思います。例えば、「日本の優秀な男性審判員はいらっしゃるのに、なぜ私が」といったような気持ちがあるのではないかなと思っています。そういった今の気持ちをお願いします。
「まずは嬉しいといった気持ちがあります。しかし、日本人として参加することに関して責任をすごく感じています。複雑な思いというのもありますけど、私が出来ることは自分自身のベストを尽くすこと。尽くさなければならないことが私の参加するにあたっての責任です。その責任を担ってベストを尽くしたいです。」
―W杯には開幕戦や決勝戦など大事な試合がありますが、特に担当したい試合はありますか?
「夢の舞台ですので、正直そこまでまだ考えられていないです。まずは(FIFA審判委員会から割り当てを受け)ピッチに立てるように全力を尽くすというのが今目指しているところです。(*筆者注:選出されても試合を割り当てられないレフェリーもいる)」
―こういったシーンなど思い描くものは?
「特にありません。しかし、最初の始まる笛の時には、何も考えず気持ちを込めて吹きたいと思っています。」
―選出されたという話を聞いた時どんな気持ちになりましたか?
「W杯は夢のまた夢の舞台でした。正直驚いたということが最初の気持ちです。夢を現実に出来るという嬉しさも溢れてきましたし、そこからは幸せ、感謝などの気持ちでいっぱいでした。」
―W杯で笛を吹くということは世界トップレベルのスピードへの対応が必要になりますが、心掛けたい部分などありますか?
「心掛けることは今までと変わらず、いつも通りのパフォーマンスができるようにしたいです。そのためにも日々の努力が必要だと思いますので、W杯までの期間を努力して準備したいと思います。」
―印象に残っているW杯の大会はありますか?
「特にないです。しかし、W杯の雰囲気にはすごく憧れがあります。スタジアムだけでなく、国全体の雰囲気が好きです。カタール大会での飛行機や現地で目にするものや雰囲気に憧れがあります。」
―W杯を現地で見たことは?
「ないです。」
―選考通達の連絡方法は?
「昨晩、海外の審判員からメッセージが届きまして、英文でもあったため最初は理解ができませんでしたが、それで知りました。「おめでとう」というメッセージがきて、その後ニュースで知りました。」
―扇谷委員長に質問です。これまで山下さんが男子の試合で担当したのはJ3でしたが、W杯に備えて上のカテゴリーを担当させるなどの考えはありますか?
扇谷委員長「もちろん、そういったものは考えなければならないです。しかし、彼女たちはシーズン初めから(FIFAレフェリーの割り当てで)海外生活が多く、現在、上手くタイミングを合わせるのが難しい状態です。
なぜ山下さんがJ3の審判員をやっているのかというと、最終的にはJ2・J1も担当するという前提でチャレンジしてもらっています。(筆者注:飛び級でJ1リーグ担当はなく、全ての審判員が段階を踏んでいる)」
―山下さんの持ち味というのはどういったところでしょうか?
「男性に引けを取らないスピードですね。スピードというのはトレーニングでどんどん上がっていくものではないです。本人の努力もあると思うのですが、ある程度持って生まれたものでもあります。そういったものは非常に魅力的だと思います。レフェリーというのは自分が思ったもの、見たものを(競技規則を適用して)貫いてジャッジしなければなりません。そういったところでの芯の強さも改めて魅力的だと思いました。」
―W杯という最高峰の大会に備えて、どのようなフィジカルをこれから鍛えて身に着けていきたいと考えていますか?
山下レフェリー「(Top of topの)スピードや展開力、そういうものに対応していかなければならないというのはあります。
しかし、(Top of topの試合に必要なことは)私たちが普段やっているトレーニングと変わりがないので、常に向上を目指して、より良いパフォーマンスを目指してトレーニングしていきます。そこに特別変わりはないので、今やっていることを継続してより高いレベルを目指します。」
―山下さんならではのトレーニングというのはありますか?
「オーソドックスなことしかやってないと思うのですが、色んな力が審判員も必要になるので、スピード、スタミナ、俊敏性、瞬発力など色々な力が必要になります。そういった力が満遍なくすべての力が身につくようにということは、凄く意識してトレーニングをしています。」
―先月ブラジルでは女性の審判員の判定に対して、暴力的な対応をとった事件がありました。もし山下さんがこういった場面に遭遇した時、こういった対応をしようと決めていることはありますか?
「試合中に起こることは審判員としてできる対応をします。競技規則にのっとって、私ができることをしようと思っています。その上で必要であれば、試合後には審判員として報告をし、やるべき事をこなすだけだと思います。」