【無料記事/J1担当主審強化合宿取材記2013】山岸貴司
岡田さんには、基本的にトレーニングを一任されているので、今回は私の『ピラーストリングス』ですね。真ん中を強くしっかり作って、機能的な動き作りを獲得しようと。
―なるほど。今年はフィジカル要素が、プラクティカルトレーニングにもかなり入っているように見えたのですが、これは山岸さんが?
(笑)ですよね。私もそうですが、実は岡田さんからのリクエストが強かったので。
―それは、レフェリーのフィジカルレベルを上げたいと。
はい。私も岡田さんも、そう思っています。
―なるほど。今年、というか昨年くらいから若手のレフェリーが増えています。フィジカルを多く入れたというのは、そういった若手のレフェリーの方々に、プロフェッショナルなトレーニングという基準を示したいというのもあったのでしょうか?
はい。あります。
FIFAのレギュレーションでルールが改正されて、今までのチーム、ベンチメンバー7人が12人になったじゃないですか?その理由のなかに、ベンチにいるベテラン選手の姿を見せると。それが明文化されている。
我々レフェリーも、今まで少人数のプロだけでやっていた。それだけだと、末端に色々なものが行き届かない。気持ちの部分とか。今回は全員が参加できた訳ではないですが、Jリーグ担当には声をかけて。若いレフェリーで、J担当している子には「それでJ担当できるのか?本当に大丈夫か?」と。僕もかなり言っています。「そのレベルじゃ、選手にリスペクトされないぞ」と。「そういう走り方では」「そんな止まり方では」「肩でぜぇぜぇいって、マンマネジメントできるか?」と。若手はかなり刺激になっていると思います。吉田さん筆頭に、ベテラン組が頑張っていますから。
―昨年は、この合宿のセッションで、メンタルトレーニングや、走り方のトレーニングがありましたよね?今年はそのような試みは?
ランニングのテクニックに関しては、二年前から代表でやっているアスリートパフォーマンスに私自身が行って、レクチャーを受けて、教育を受けてきたので、今年からは、私がレフェリーに発信しています。
メンタルは、明日の夜、昨年同様の講義があります。
―なるほど。プロフェッショナルレフェリー以外で、何人くらい参加されているのでしょうか?
12名だと思います。昨日から入って、9、10、11日の三日間は朝と午前のセッションに出られるようにと。午前はストリングスがメインです。午後は体に入れた刺激を今度はスキルとして、走り方とかですね。
―午前、激しい筋力系などのトレーニングをやって、午後はそれを活かすテクニックなどのトレーニングと。
さらに、エンデュランス、スタミナをつけるトレーニングですね。二時間みっちりですね。
―審判員の方々の反応は如何ですか?今までで一番厳しいとか。
盛りだくさん、色々な要素が入っているのですが、非常に新鮮で、色々な段取りがテンポ良くいっているものですから。やはり、私の説明がダラダラ長くなって、飽きが出て、トレーニングのテンポが悪くなると、良いトレーニングではない。
―昨年、偶然、試合会場で飯田(淳平:プロフェッショナルレフェリー)さんにお会いして。私的には、凄く調子が良く見えたので、そうお伝えしたら、「山岸さんのトレーニングで調子が良い」と。
嬉しいですね。そうですか。DVDを年末に作って、オフ中には、こういったトレーニングをやりなさいと。それを支給しているので、それは凄く浸透しているなと。たとえば、吉田さんもそうですし、若手もそうです。
―一級審判員研修会で渡していたDVDですか?
そうです。もっと早い段階で渡したかったのですが、PRにしか年末には渡せず。今年スタートで、来年、再来年と積み上げて。なんていうのかな、レフェリーでも、これだけの迫力をもって、加速ができるんだ。そういうのをたくさん作りたいんですよね。そういった基礎をしっかり作り、選手がサッカーというスポーツを集中しやらせてあげれるようにする。楽しませてあげる。レフェリーも普通に動き回れるような。
―ちなみに、DVDの内容はどのような?
お腹を作るトレーニングから、末端の下肢を作るものまで。こういうトレーニングをという動画を作ってあります。
―最後に、レフェリーに若手が増えましたよね。これは、フィジカルレベルの高い審判員を作っていきたい。今後は若手に切り替えたいという狙いがあるのでしょうか?
いえ、私の方では、それはないです。
―もう一点だけ。そんな若手に要求したいことはありますか?
一級になって、勘違いしてしまうというか。Jリーグ来たんだという気持ちの嬉しさだけが、さきばしっちゃって。空回りする傾向が凄く多いので、まだまだだぞ。そのレベルまで達してないぞと。しっかりとしたフィジカルレベルに持っていきたい。そういった意味でも、このような合宿は重要だと思います。(了)