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川本梅花 フットボールタクティクス

ヴァンラーレ八戸の失点の原因を探る【試合分析】J3第17節 #ヴァンラーレ八戸 0-1 #テゲバジャーロ宮崎

【レビュー】ヴァンラーレ八戸の失点の原因を探る

明治安田生命J3リーグ第17節、ヴァンラーレ八戸対テゲバジャーロ宮崎戦が、9月4日にプライフーズスタジアムで行われました。結果は0-1で、八戸の黒星に終わりました。

予想通り、八戸のフォーメーションは「3-6-1」の3バックシステムで、宮崎は「4-4-2」の中盤がボックス型でした。以下が両チームのシステムを組み合わせた図です。システムの組み合わせに関するポイントは、本サイトのプレビューで解説しました。

八戸は、右のウイングバック(WB)に高見 啓太を起用してきました。同様に右のセカンドトップ(ST=シャドーストライカー)には中村 太一を当てています。けが人を多く抱える八戸は、現状でのベストな選手選考だと思います。前節のいわてグルージャ盛岡戦のコラムでも述べましたが、FWのコマ不足は、宮崎戦でも見られました。DFの裏に抜けようとする選手がいないのです。中盤で相手からボールを奪って、「さあ、カウンターだ!」と思っても、ボールホルダーが縦へパスを出したくても、誰もDFの裏へ走り込もうとはしません。そうこうしていると、宮崎の選手がプレスに来て横パスで逃げる形になってしまいます。一度、「横パス禁止令」を出した方がいいくらい、無駄な横パスが見られました。思い切ってプレスに来た相手を剥がして前を向いてドリブルするとか、チャレンジしてもいい場面でも消極的なプレーが散見します。言い方を換えれば、「慎重になっていた」とも言えるのですが、ボールロストを恐れていたように映りました。

八戸の失点の場面を振り返ってみましょう。宮崎のセンターハーフ(CH)の前田 椋介が右サイドでボールを受けます。前田は、センターバック(CB)の大畑 隆也にバックパスを出します。大畑は、左サイドハーフ(SH)の渡邊 龍がディフェンスラインからボールをもらいに前に出てきた瞬間に縦パスを送ります。渡邊は、左足の甲を使ってダイレクトパスを、八戸の左ストッパー・伊勢 渉とスイーパー・赤松 秀哉の間に通します。そこに走り込んだFW藤岡 浩介がシュートを打ちます。GK蔦颯に当たったボールは、ゴール前まで転がり、FW橋本 啓吾がスライディングしながら押し込みます。これが八戸の失点までの流れです。

まず、前田から大畑にパスが渡った時に、大畑はフリーでボールを持てました。それは、八戸のFW岡 佳樹が前田にプレスに行ったので、大畑がフリーでボールを持てたのです(14分10秒)。もし、大畑にプレスに行くのならば、後ろにいた前澤 甲気か中村に「大畑を見るように」と声をかけるか手でコーチングする必要がありました。なぜならば、ポゼッションを志向する宮崎のサッカーは、最終ラインを高くして、後方から前線に縦パスを供給することがあるからです。CHの前田がサイドに移動することで、結果的に岡をつり出して、大畑がフリーになった形になりました。

渡邊に縦パスが入る前の八戸のディフェンスラインは、WBの2人が帰陣して5バックになっていました。渡邊にボールが入った時に、「これは危険だ!」と察知して前に出てプレスに行ったのが小牧 成亘でした。しかし、小牧のプレスが間に合わずに、ボールは赤松と伊勢の間に出されました。渡邊に大畑からボールが渡った時に、小牧がプレスに行ったのですが、本来ならば、八戸のCHのどちらかが渡邊がボールを受けた位置にポジショニングしていないとならないのです。問題は、なぜ、渡邊がボールを受けたスペースが空だったのかにあります。以下にある図は、失点場面の選手のポジショニングとボールの流れを記しました。

大畑からボールを受けた渡邊がいた場所には、八戸の選手が誰もいません。それはなぜかと言えば、八戸側から見ての左サイドで宮崎にボールを回されていたので、中盤と前線の選手が左に寄っていたのです。しかも、ディフェンスラインと前線の間が間延びして、コンパクトに陣形を保てない状態でした。前田から大畑にボールが渡った瞬間にディフェンスラインを思い切って上げるなどの対処をしなければ、中盤にフリースペースが生まれて、ピンチになってしまいます。この試合は、全体的にディフェンスラインを上げられなかったように見えました。それ故に、前線がプレスに行くと余計に前と後ろの距離が空いてしまう状態になっていました。

消極的なプレースタイルだったように見えたこの試合を象徴するのが、八戸のシュート数が2本だったことが何よりも物語っています。宮崎の選手によるボールへの寄せが早かったので、シュート体勢を作れなかったというのが、シュート2本の真相でしょう。もう一度気持ちを切り替えて、次節の9月12日に行われるカマタマーレ讃岐戦にしっかりと準備をしてほしいです。

川本梅花

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