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川本梅花 フットボールタクティクス

【コラム】ボローニャ戦術分析アシスタントコーチによる5つのフェーズ(後編)「footballista」(2021年5月号)

【コラム】ボローニャ戦術分析アシスタントコーチによる5つのフェーズ(後編)「フットボリスタ」(2021年5月)

この号の特集は、[プロ目線のサッカー観戦術 最先端の「分析」とは何か]です。

前編からの続きになりますので、前編を読まれてから後編をどうぞ。

この図に照らし合わせながら、バルディ氏の理論を説明していきます。

 

5つのフェーズのうちで最初に挙げた「ビデオテープとデータによる対戦相手分析」で、具体的に注視点をバルディ氏が指摘しています。片野氏は以下の質問をします。

その時に(川本注:分析する際に)特に注意するポイントはありますか。

この問いに対してバルディ氏は、まずネガティブトランジションを取り上げて、以下のように答えます。

ネガティブトランジションに関しては、その前のポジショナルな攻撃の時点で予防的なカバーリング/マーキングを行っているかどうか、基本的な振る舞いは即時奪回かリトリートか、空きがちになるスペースはあるか、全員が同じように状況を読み取っているか、リトリートのスピードはどれくらいか、といった点に注目しています。ボール非保持時は、まずプレッシングについては開始点の高さ、何がトリガーになるか、どこにボールを追い込んでどこで奪おうとするか、組織的守備については基本的な配置、陣形の縦横の長さ、ゾーン内でボールと人のどちらに基準点を置くのか、逆サイドのスペース管理の仕方。

次に、ポジティブトランジションについて言及していきます。

ポジティブトランジションでは、縦への展開とポゼッション確立のどちらかに軸足が置かれているのか、奪ったボールを出す基準点は誰か、ボール保持時は、ビルドアップの配置とプレッシャーラインを越えてボールを敵陣に運ぶメカニズム、ポジショナルな攻撃時には仕掛けとフィニッシュの鍵になるプレーヤー、2ライン間、幅、裏のうちどのソリューション(解決策)を主に使うかといった点がチェックポイントです。

「ネガティブトランジション」=「守備の局面(ボールをキープされている時)」=「攻めから守りへの切り替え時」

上記の図の守備の局面(ボールをキープされている時)」が「ネガティブトランジション」になるのですが、注意したいのは、「ボールを奪われた瞬時」と「ボールを奪われての保持」の2つがあるのです。基本的には、自分たちが相手からボールを奪われてから、どんなやり方で守るのかを分析します。

【ネガティブトランジションに関して】

①ポジショナルな攻撃の時点で予防的なカバーリング/マーキングを行っているかどうか

②基本的な振る舞いは即時奪回かリトリートか

③空きがちになるスペースはあるか

④全員が同じように状況を読み取っているか

⑤リトリートのスピードはどれくらいか

【ボール非保持時に関して】

①プレッシングについては開始点の高さ

②何がトリガーになるか (川本注:トリガーは「引金」「きっかけとなる合図」の意味)

③どこにボールを追い込んでどこで奪おうとするか

【組織的守備に関して】

①基本的な配置

②陣形の縦横の長さ

③ゾーン内でボールと人のどちらに基準点を置くのか

④逆サイドのスペース管理の仕方

「ポジティブトランジション」=「攻撃の局面(ボールをキープしている時)」=「守りから攻への切り替え時」

上の図にある「攻撃の局面(ボールをキープしている時)」が、「ポジティブトランジション」に当たります。こちらも「ボールを奪った瞬時」と「ボールを奪っての保持」の2つがあります。自分たちが相手からボールを奪ってどんなやり方で攻めるのかを分析します。

「ポジティブトランジションに関して」

①縦への展開とポゼッション確立のどちらかに軸足が置かれているのか

②奪ったボールを出す基準点は誰か

「ボール保持時に関して」

①ビルドアップの配置とプレッシャーラインを越えてボールを敵陣に運ぶメカニズム

「ポジショナルな攻撃時に関して」

①仕掛けとフィニッシュの鍵になるプレーヤー

②2ライン間、幅、裏のうちどのソリューション(解決策)を主に使うか

試合を分析する視点で最も重要なことは、「ボールを奪われた直後(ネガティブトランジション)」と「ボールを奪った直後(ポジティブトランジション)」の展開の仕方を見ることです。バルディ氏が述べていることですが、「試合開始から10分」での分析は可能です。実際に、バルディ氏の提起したやり方にしたがって分析を進めると、そのチームの戦い方がよく見えてきます。

イタリアの最先端の分析法が日本語で読めるのは貴重なことだと思います。

川本梅花

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