混沌J2の今後を展望するLIVE(J論)【4/10(木)21時】

宇都宮徹壱ウェブマガジン

目標は「次の成長を一緒に考えてくれる仲間づくり」 前社長と社外取締役が語る「山雅塾」の本質<1/3>

 今週はJ2昇格プレーオフ決勝に進出した、松本山雅FCについてフォーカスする。といっても当WMのこと、ピッチ上の現象については他のメディアにお任せして、より「山雅らしさ」が感じられるテーマを取り上げることにしたい。

 松本山雅は今年9月、「山雅塾」なるものを開講した。最近は、いくつかのJクラブがビジネスアカデミーを開講しているが、山雅塾は「地域と共に成長を目指す松本山雅からクラブ経営を共に考える」と銘打っているのが特徴的である。

 ちなみに6回のカリキュラムで、受講料は一般が88000円、学生が33000円(いずれも税込)。定員を30名としている。現在、ブックライター塾2期生を募集している私としては、こうした価格設定や募集結果も含めて非常に気になるところ。それ以上に、松本山雅が独自のビジネスアカデミーを開講した、真の理由が知りたいところだ

 そこで今回は、発案した前社長の神田文之さん、そして講師として登壇した社外取締役の米田惠美さんに、山雅塾の本質についてお話を伺うことにした。プレーオフ決勝までの間の読み物として、お楽しみいただければ幸いである。(取材日:2024117日=オンラインにて収録)

(まだ終わってないけど)2024年の松本山雅を振り返る

──神田さん、米田さん、今日はよろしくお願いします。現時点ではJ3の日程は残っていますが、神田さんは社長を退任して初めての、米田さんは社外取締役となって初めてのシーズンとなりました。それぞれの立場から、2024年の松本山雅について振り返っていただけますでしょうか。

神田 現時点での振り返りは難しいんですけど、フットボールのところは、去年につづいて難しいシーズンだったと思っています。短期的な成果を求めたい部分でもありますが、ここ数年、苦労しながら取り組んでいることが成果に結びつくよう、基本的には見守るスタンスです。

 フットボールでのいい結果を期待する一方で、経営サイドからいい影響を与えられる形としては、スポーツビジネスでお金を稼いで現場に回すサイクルを作ることです。その意味で(社長を退任後は)自分がやるべきことに集中して臨めたシーズンだったかなと思っています。

米田 先日の試合で、プレーオフ進出が確定しました。そこに向けて、全力で現場が向き合っている以上、バックアップできるようにサポートしていきたいと思っています。それぞれの持ち場は、それぞれ全力で頑張っているんです。勝敗に依存しすぎない経営を目指しても、チーム成績が難しい状況だと、どうしてもクラブ経営は難しくなっていくっていうのが常ですよね。

 まだシーズンは終わっていませんが、来季に向けてという観点ですと「何を変えるのか」というところを経営陣として、徹底的に議論していくフェーズかなと思っています。私自身は4月に就任したので、チーム編成もシーズン前営業も終わり、収支の着地予想といったものは、シーズンインのタイミングでほぼ固まっていました。来季に向けては、もう少し関わっていけるのかなって思っています。

──米田さんにもうひとつ伺いたいのですが、これまではJリーグの理事をはじめ、フェンシングやハンドボールなど、リーグや協会でお仕事をされてきたじゃないですか。それが今回、毎週一喜一憂するような仕事を経験してみて、何か新しい発見はありましたか?

米田 おっしゃるとおりで、自分では気をつけていても、やっぱり一喜一憂します(笑)。それでも、チームやサポーターと一緒に戦っているという意味では、一喜一憂するのも大切だなと思っています。そこで感じたのが、山雅のサポーターの皆さんって私が想像していた以上に、ピッチ上の結果やプレーの質にこだわっていたんですよね。そこは新鮮な発見としてありました。

──米田さんを社外取締役に迎えることは、神田さんのアイデアだったと聞いています。4月から米田さんがジョインしたことで、クラブにどんな影響があったと感じていますか?

神田 山雅に対して、日に日に距離を縮めてくれていると感じています。いろんな引き出しをお持ちですので、それらをどんどんクラブに反映していただけるように、こちらも工夫していく必要を感じていますね。フレッシュな目線をお持ちですので、現場にいる人たちにもモチベーションを与えてくれています。あと、意外とフットボールのことも詳しいんですよね(笑)。

──だからこそ、一喜一憂されているんでしょうね。もうひとつ、おふたりに伺いたいのが、今年就任した小澤修一社長についてです。前任の神田さんから見て、いかがでしょうか?

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