安易すぎる(?)パワハラ指導者の再チャレンジ 月イチ連載「大人になった中坊コラム」
【中坊(ちゅうぼう)プロフィール】
1993~2023年のスタジアム観戦数は962試合。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。
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サガン鳥栖監督時代の2021年、選手、スタッフ、そしてユースの少年たちに対するパワハラ、暴言・暴行が明るみになった金明輝(キム・ミョンヒ)氏。同年、監督退任。2022年には、公認指導者S級ライセンスからA級への降級処分を受けた。しかしその年、FC町田ゼルビアのヘッドコーチとして、指導者の立場に返り咲いている。
そして2024年終盤、アビスパ福岡の監督就任が報道されたことにより、当の福岡サポーターから就任に大反対の声が挙がっている。
パワハラが明るみになったことで処分が下った監督は、金明輝氏以外にも、湘南ベルマーレのチョウ・キジェ(曺貴裁)氏などもおり、なおかつ2020年末にチョウ・キジェ氏が浦和レッズへの監督就任報道がなされた際も、今回と同様に浦和サポーターから反対の声が挙がっていた。しかし、金明輝氏の場合、選手やスタッフのみならず複数年にわたって未成年への暴行をしたこともあり、より大きな反対運動が繰り広げられている。
今後も、パワハラにより処分が下った指導者へのセカンドチャンスが話題になり、物議を巻き起こすことが今回の件に限らず想定される。そのため、Jリーグ、そしてサッカー界におけるひとつの「負の歴史」として、騒動を記録に残しておこうと思う。
なぜならこの件に限らず、選手・監督のポジティブな面の方がメディアや公式記録等では残りやすく、ネガティブな事象はサポーターの個人ブログのみにしか残らないことが多い。その場合、新たに参入したサポーターにとっては歴史を知ることができないため、こういった形で残す必要性があると考えた次第。
自分は当事者である福岡(あるいは鳥栖や町田)のサポーターではないため、中立的な立場から事実をベースにまとめていきたい。いつもより長いテキストになることを、あらかじめお断りしておく。
(1)メディアによる「就任が決定的」という報道
メディアによりチョウ・キジェ氏の浦和就任の報道がなされた時、「決定的」「最有力」「大筋で合意」とまでは書かれなかったため、浦和サポーターによる大規模な反対運動が巻き起こることはなかった。
しかし今回の金明輝氏においては、「ほぼ就任決定」といった報道であるため、このままでは自分の応援するクラブにパワハラ歴がある監督が就任してしまうという危機感から、激しい反対運動に至ることとなった。
(2)金明輝氏がダービー相手の監督だったから?
福岡のサポーターが過敏に反応しているのは、金明輝氏が「鳥栖の監督経歴があるから受け入れられないのでは?」と見る向きもある。が、これが正しいとは限らない。
福岡のサポーターたちは「鳥栖を率いていたから嫌いだ」ではなく、「普段、意識している隣のクラブを率いていたため、パワハラ問題についても当事者レベルで注目していたから」という捉え方だ。これがダービーの相手でもない、別のクラブでパワハラをしていたのとはワケが違う。より身近で、普段から意識をしている鳥栖を率いていたので、福岡サポーターの情報量はより多い。
ダービーの相手である鳥栖の不祥事を、福岡側が注目するのは当然。パワハラの具体的事例である、暴行・暴言の詳細についても当事者並の意識で確認し、弾劾していた。
これはダービーのあるクラブなら、理解しやすいと思う。浦和レッズと大宮アルディージャ、ガンバ大阪とセレッソ大阪、横浜F・マリノスと横浜FC、FC東京と東京ヴェルディ。お互いの不祥事や問題については、双方共にチェックするし、悪く言えばお互いのマイナス面をあげつらう。つまり、当事者の次に詳しくなってしまうのだ。
鳥栖の監督を率いていたことに対する拒否感ではなく、鳥栖の監督時代のパワハラ内容について、自分事に近い形で福岡サポーターは捉えていたことが大きかった。彼らは情報量が違う。そんな熟知されている中で、舞い込んできた就任報道だったから、騒ぎになるのが当然である。
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