【サッカー人気4位】浦和が見せたワールドクラスのカウンター。ついに見つけた戦い…

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【無料公開】『We are Diamonds』を歌うTPOを考える 相良純真(URAWA BOYS創設者)✕ロック総統<3/4>

サポーター急増で伝えたいことが伝わらない

──あらためて、新潟戦で勝利したあとでコールリーダーが「今日は(『We are Diamonds』を歌うのを)止めておこう」と言った理由を知りたいですね。他のサポーターの間でも、あの一件は非常に話題になりましたが、おそらく浦和のゴール裏ならではの事情があったと思うのですが。

相良 『We are Diamonds』って、もともと僕らの頃は「勝ったから歌えばいい」というものではなかったんですよ。

──なるほど。では、歌って良い時というのは?

相良 「これで勝ちが決定だ」とか、「今日の試合は完璧だね」とか、「いい勝ちだったね」っていう試合の時ですね。しかも、歌い出すタイミングにも気を遣っていました。アディショナルタイムから逆算して、「だいたいこのくらいに終了のホイッスルが鳴るだろう」というタイミングを割り出して、そこから歌い出すわけです。

 これは間接的に聞いた話ですが、ある対戦相手のサポーターは「あの曲が聞こえてきたら、もう俺らは負けを認めるしかない」って言っていたそうです。だから僕らにとって『We are Diamonds』って、まさに完勝の歌なんですよ。

──それが確立されたのって、いつ頃ですかね。

相良 1995年とか、96年くらいじゃないですかね。

総統 強くなり始めた頃ですよね。

相良 そうです。いろんなことやって、いろんなこと試しているうちに、いろんなものがハマっていった時期です。

──でもネットでの議論を読んでみると、そういった伝統というものが、あまり受け継がれていないように感じられたんですが。

相良 槙野(智章)が、「あのチームソング、勝ったらみんなで歌おう」って言い始めたのがきっかけですね。それが2年前(2015年)くらいかな。もちろん、選手があの歌に興味をもってくれたこと自体は嬉しいですよ。でも、どういう時に歌うのかというのは、やっぱり知っていてほしかったというのはあります。結局、そんなこともあって『We are Diamonds』は完勝の歌ではなくて「勝ったら歌っていい歌」になってしまった。

──でも「そうじゃないんだ」という人もいたと。

相良 ゴール裏の若い子たちはそうですね。連敗した中で新潟に勝って、でも次は首位のセレッソとアウェイ戦がある。そこで勝てる保証がないから「今日は止めておこう」だったと思います。それをトラメガで伝えようとしても、埼スタは広いからみんなに(真意が)伝わらなかった。だからバックスタンドからブーイングが来たんですよね。向こうは向こうで「試合に勝ったんだし、歌う気満々なんだから『止めておこう』はないだろう」って思うわけですよ。

総統 ただ思うんですけど、Jクラブのスタンドって『右なら右』、『左なら左』とわかりやすく言ってほしいっていう独特の文化というか空気がありますよね。正直、僕はあれって抵抗がありました。鹿島のゴール裏でも感じていたんですけど、人数が多くなればなるほど、そういう同調圧力みたいなのがありますよね。それが嫌だから、僕は「居酒屋ムサリク」と称して、サッカーをつまみに自由に応援するという趣旨の飲み会を年1回やったりしているんですけど(笑)。

──でも「居酒屋埼スタ」は、どう考えても無理でしょう(笑)。逆に、これだけ大所帯となると、がっちり統率する人たちは必要なのかなって思いますけど。

相良 駒場から埼スタに移って人数も増えましたから、統率したり伝えたりするのが難しくなりましたね。駒場の21500人から、埼スタが63000人だから3倍に増えた。だから僕らのやり方が通用しなくなっているところは確かにあります。それに若い子たちに伝えようと思っても、聞いているようで実は聞いているフリだったりする(苦笑)。

 もちろん、僕らの話を聞きたがっている子もいますけど、なかなかこちらが伝えたいと思っていることが伝わらない。そのくせネガティブなことはSNSですぐに広まってしまう。そういったジレンマは、最近よく感じますね。

<4/4>につづく

【無料公開】バスを囲みたくなる前に考えてほしいこと 相良純真(URAWA BOYS創設者)✕ロック総統<4/4>

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