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【無料公開】バスを囲みたくなる前に考えてほしいこと 相良純真(URAWA BOYS創設者)✕ロック総統<4/4>

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今季は久々にアジアを獲れるチャンス

──先日、埼スタで行われたドルトムント戦を取材してきました。結果は残念でしたけど(2-3)、選手たちはリーグ戦のようなプレッシャーを感じることなくプレーしていたように思います。その後、鈴木啓太氏の引退記念試合もあって、ほっこりした雰囲気に包まれているように感じられました。いずれも華試合ではありましたが、浦和サポ的にはどう受け止めていたんでしょうか。

相良 うまく使ってもらえればいいんですけどね。ただドルトムント戦は、向こうのファンにスタンドを支配されている感じでした。実は「ドルトムント戦はいいや。啓太の試合は行くけど」みたいなことを言う連中がいっぱいいたんですよ。

──それって、Jリーグファンと海外リーグファンの断絶のようにも感じられる話ですね。

相良 でも、啓太の引退試合にたくさん来るのかと思ったら、スタンドに来ていたのは古い人間ばかり。ピッチ上では同窓会っぽくなっていましたけど、スタンドも久しぶりの連中が多かったので同窓会でしたよ(笑)。

総統 さっき相良さんは「ウチらは嫌われてもいいっていうスタンスでやってきている」っておっしゃっていましたけど、それでも浦和が日本を代表するサポーターグループであることに間違いないんですよね、いい意味でも悪い意味でも。

 これをロックバンドに喩えると、「俺たちは好きなロックをやっているだけ」と思っているかもしれないけど、CD100万枚も売れているようなロックバンドだったら、もうインディーズ時代のような振る舞いはできないと思うんですよ。そこに窮屈さを感じるかもしれないけど、好むと好まざるとにかかわらず、そういう立場になったってことですよ。

──人間、誰しも注目されたいという欲求はありますけど、注目されすぎると確かに戸惑うことってありますよね。ただし、浦和のゴール裏がこれだけ人が多くなったのって、単に強いからとか有名な選手がいるからといった理由だけではなくて、スタートの時点から志の高い目標を掲げていたこともあったんじゃないかと思うんですが。

相良 それに関して言えば、僕らはACLがまだアジアクラブ選手権の時代から「アジアに出ていこう」という話を真剣にしていましたよ。Jリーグでは下のほうを彷徨っていた時代でしたから「あいつら何を言っているんだ」みたいに馬鹿にされていましたけど。それでもいつかはアジアに打って出て、「日本にはこんなサポーターグループがいるんだぜ」というのを知らしめたかった。

 だから犬飼(基昭)さんが社長になった時、僕はすでに引退したかったんですけど「天皇杯で5連勝して優勝したらアジアに行けるんです。アジアでウチらの存在を世界に示したいんです」って言ったら、次の年にバンバン補強してくれて、それでACLに出場できたんですよ。

総統 へえ、犬飼さんを焚きつけちゃったんですか。

相良 もちろんクラブ側にも「いずれは世界へ」というビジョンはあったと思いますけど、それと僕らの思いがリンクしたことがACL優勝とCWC出場につながったと思います。

──その意味でいうと、今季は久々にアジアを獲れるチャンスじゃないですか。

相良 そうなんです。済州とやった時に2007年の雰囲気にすごく似ていたんですね。「これいける!」というのが僕の中であって、だったら川崎とは、さっさと当たっておきたいなというのがありました。ここで川崎に勝てれば、あとは敵なしと思っているくらいです。

 まあ、リーグ戦はイマイチではあるんですけど、それでも首位のセレッソとの勝ち点差は9ですよね。そんなに悲観はしていないです。僕らは(2007年に)勝ち点10差で下にいた鹿島に逆転で優勝を持っていかれた経験がありますから(苦笑)。

総統 ありましたねえ、そんなことも。「鹿のチョイ差し」と言われる事件ですね。

相良 今は確かにリーグ戦で厳しい戦いが続いて、目先の勝利ももちろん大切なんだけど、久々にアジア(のタイトル)を獲れるチャンスなんだってことが、もう少しゴール裏全体に(意識として)広がってほしいところですよね。

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