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なぜ言語学の研究者はセルビアとJFLを撮影するのか? 石川美紀子(フィールドワーカー&フォトグラファー)<1/3>

 第104回目となる天皇杯が開幕した。今大会の東京都代表は、4年ぶり6回目の出場となる横河武蔵野FC。残念ながら1回戦で敗れたが(栃木シティFC0−1)、久々の天皇杯出場を心待ちにしていたのが、今週ご登場いただく石川美紀子さんである。

 石川さんと初めて会ったのは、JFLの試合会場。彼女もまた撮影用のビブスを着用しており、武蔵野のほかにラインメール青森の撮影も担当しているという。名刺に書かれた住所は、愛知県名古屋市。なぜ遠く離れた、武蔵野と青森を追いかけているのか。さらに謎なのが、彼女のnoteにアクセスすると、JFLに混じってセルビアの代表チームや女子クラブチームの写真も出てくることだ。

「この人は、どういうバックグラウンドを持っているのだろう」──。そうした疑問が、今回のインタビューの契機となった。

 実は石川さんはフォトグラファー以外に、中京大学社会科学研究所特任研究員という肩書も持っている。もともとは言語学の研究者であり、大学院修了後にセルビアにわたり、それほど興味もなかったサッカーを撮影するようになったという。同じく大学院出で、バルカン半島に渡って写真家を名乗るようになり、JFLや地域リーグを取材している私からすると、ちょっと他人事には思えない。

 石川さんに話を聞いたのは、GWのさなかに武蔵野陸上競技場で開催された、武蔵野と青森の試合当日。インタビューを通して痛感したのは、サッカーという競技は光の当て方によって、さまざまな輝きを放つということだ。具体的に、どういうことか? さっそく、石川さんの言葉に耳を傾けてみたい。(取材日:202454日@東京)

【編集部より】今回掲載した写真はすべて石川美紀子さんにご提供いただきました。

撮影するのはラインメール青森と横河武蔵野FCのアウェイ戦

──今日は54日、ムサ陸で横河武蔵野FCとラインメール青森の対戦があります。どちらも石川さんがフォトグラファーとして関わっているわけですが、なぜ武蔵野と青森なのかを教えてください。

石川 武蔵野も青森もそうなんですけど、ホームのオフィシャルの方はいらっしゃるんです。ですので、基本的にアウェイの試合の担当なんですね。私は名古屋在住ですが、東海地域にはけっこうJFLのクラブがあるじゃないですか。

──Honda FC、ヴィアティン三重、アトレティコ鈴鹿クラブ、FCマルヤス岡崎、それと降格しましたけれどFC刈谷もありましたよね。

石川 そうです。最初は青森から「名古屋近辺の試合を撮影してもらえませんか?」という依頼を受けたのがきっかけでした。

──石川さんは名古屋の大学で講師をされているわけですが、なぜに青森からそういうオファーがあったんでしょうか?

石川 きっかけは、青森にいた後藤京介選手です。彼は専修大を卒業後の2015年から16年にかけて、モンテネグロの2つのクラブ(FKモグレンとFKイスクラ・ダニロヴグラード)でプレーしていたんです。ちょうど私も(セルビアの)ベオグラードに暮らしていたので、時々モンテネグロを訪ねては後藤選手のインタビューと撮影をしていました。それは取材というよりも、むしろ自分の研究論文が目的だったんですが。

──研究論文といいますと?

石川 あとで詳しく話すことになると思うんですが、海外でプレーをしている日本人選手に、言語学的な観点からインタビューするのが目的でした。ただ、モンテネグロでプレーしている日本人選手って、なかなかメディアに取り上げられることってないじゃないですか。だったら写真も撮って、記事にするのもいいかなと思って。

──石川さんの研究のお話は、のちほど詳しく伺うとして、モンテネグロでプレーしていた後藤選手との出会いが、青森や武蔵野とどうつながっていくんでしょうか?

石川 後藤選手は帰国後、J3J2のクラブでプレーして、2021年に青森に移籍したんです。その当時、青森にはアウェイで撮影するフォトグラファーがいなかったので、名古屋在住の私のことを推薦してくれまして。そこから青森さんとのご縁が生まれることになりました。

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