【サッカー人気2位】3月の試合で見えた成長と課題 現状の戦力で戦い抜けるか?【…

宇都宮徹壱ウェブマガジン

南葛SCを大型補強だけで語るなかれ 社員選手・楠神順平の一日<2/2>

 南葛SCMFにして社員選手、楠神順平の密着取材につづいて、その答え合わせとなるインタビューをお届けする。取材に応じていただいたのは、楠神選手本人と岩本義弘GMである。

 今季の南葛の所属選手35名のうち、社員選手は6割の21名となっている。サッカーを続けるために働くのではなく、サッカーとビジネスの両立というスタイルは、今季からJFLを戦うクリアソン新宿に近いものを感じる。そのクリアソンも、これほど多くの社員選手を抱えているわけではない。

 地域リーグクラブとしては異例といえる、所属選手の数と社員選手の比率。それらは実のところ「1年でのJFL昇格を目指す」ための施策であるが、その延長線上に「新たなキャリアデザインの創出」というテーマが透けて見える。どういうことか? さっそく、おふたりにご登場いただこう。(2022年3月3日、オンラインで取材)

<2/2>目次

J1の清水から都1部の南葛に移籍した理由とは?

*社員選手を増やした理由は「モチベーション維持」

*理想は「40歳までに南葛と共にJに上がれれば」

J1の清水から都1部の南葛に移籍した理由とは?

──今日はよろしくお願いします。南葛SCといえば、関口訓充や稲本潤一や今野泰幸といった元日本代表の加入で話題になりましたが、さらに伊野波雅彦まで加入したのには驚きました。このタイミングでの発表となった理由は、何だったのでしょうか?

岩本 交渉に時間をかけたのが一番の理由です。今年は35人体制でいくことは決めていました。攻撃の選手については十分に揃っていたんですけど、守備陣に怪我人がいたので、あともう1人ほしいと思っていたんです。伊野波選手についてはJクラブも視野に入れていたようですが、交渉に時間をかけていたのでこのタイミングとなりました。

──なるほど。楠神選手は、伊野波選手とつながりはありますか?

楠神 チームでは被っていないですが、阪南大学時代から知っていました。僕は同志社で2年下でしたが、当時から有名でしたね。

岩本 ウチの選手では、佐々木竜太が鹿島アントラーズで被っていましたね。結婚式に呼ばれて歌を披露したそうです(笑)。

──さっそく本題に入りたいと思います。楠神選手は2020年、J1の清水エスパルスから東京都1部だった南葛SCに加入しています。まずは当時の状況と、加入までの経緯を教えてください。

楠神 清水で契約満了となって、J2J3クラブからオファーがあるかと思ったんですが、なかなかなくて。その時に岩本さんとお話させていただく機会があり、そこでクラブのビジョンだったり岩本さん自身の熱量だったりを感じることとなりました。当時33歳でしたが、毎年契約のことを気にすることよりも、サッカーを続けながら仕事を身に付けていくというキャリアもアリなんじゃないかって考えるようになりました。

──今でこそ日本代表が続々と加入していますけれど、都リーグ1部にJ1でプレーした選手が移籍してくるというのも、かなりなレアケースだったと思います。

岩本 初めてですよ。他のクラブでも、なかなかないんじゃないですかね。ですから楠神順平の加入は、当時としては非常にインパクトがありました。僕自身、まだまだ彼はJリーグでやれると思っていたので、まさか獲得できるとは思いませんでした。

──2020年は楠神選手を含めて、南葛の社員選手は3人でした。クラブ内で働きながらプレーを続けてもらうという発想は、どこから生まれたのでしょうか?

岩本 かなり実験的なところでのスタートでした。最初は、佐々木竜太と石井謙伍の2人で始めようと思ったんです。そこに楠神も加わって、社員選手として複数年契約をすることになりました。実は当初、外部のエージェントで働きながら、という話もあったんです。最終的には本人の意思を尊重して、ウチの社員選手になってもらいました。

──楠神選手に質問です。南葛で働きながらプレーすることを決断した、一番の理由は何だったのでしょうか?

(残り 3523文字/全文: 5156文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ