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アカデミーレポート:2024年 九州クラブユース(U-18)5位決定戦 VVN U-18対ロアッソユース レポート

「今日はいつもやっているサッカーで戦えるような状態ではなかったので、とにかく勝つ。今日に限っては勝つためのサッカーを優先しました」

試合後、V・ファーレン長崎U-18の原田武男監督が語った言葉が、この試合におけるV・V長崎U-18の状態を全て表わしていた。ボランチ、サイドバック、ゴールキーパー・・複数のポジションで選手が負傷する中、彼らの不在をカバーするために本来のポジションとは違う位置で選手を起用しなければならなかったのだ。右SHの選手が故障者の出た右SBに入るため、右SHに本来は左SHの選手が入るような感じである。それが一つでなく複数のポジションで発生だ。チームは「交代の切り札的な選手もほとんどいない(原田監督)」という状態にあったのである。

同時にそれが、2023年に優勝、2022年に準優勝、2021年も3位の成績を納めてきたV・V長崎U-18が、今年の九州クラブユースで5位決定戦に回り、この試合に5年連続出場中の全国クラブユース出場を懸けることになった理由でもあった。

対する熊本は、ユース在籍中にプロ契約したFW道脇豊・神代慶人がトップチームの試合に帯同し不在ではあるが、前線に個で仕掛けられる選手が多い攻撃的なチームである。試合は立ち上がりからFW西門樹浬に背後を狙わせ、あるいは相手がボールをつなぐときのミスを逃さずに引っかけて、麻生暖琉のドリブルや白濱光人の縦へとつなぐ熊本の攻勢が続いた。セカンドボールの回収でも後手に回ったV・V長崎U-18が完全に押し込まれる展開が長く続く。

苦しい中で幸いだったのは、熊本がフィニッシュの精度を欠いたこと、そしてGK鶴井李成、CB西村海陽ら守備陣が本当によく耐えたことだろう。その中で38分、右CKから宮﨑陽が押し込みV・V長崎U-18が先制する。文字どおり、前半に訪れたワンチャンスだったが、これを決めたのは本当に大きかった。さらに後半もV・V長崎U-18は相手にボールを保持されながら、再びCKのチャンスに浅井琉希がゴール。

その後もラインを高く設定してくる熊本に失点を許したものの、耐えるV・V長崎U-18がそのまま逃げ切り1対2で試合を終了。全国クラブユースU-18九州代表最後の座を勝ち取り、6年連続7度目の出場を決定した。

「非常に難しいゲームだったなと。ピンチのシーンもあった。相手のシュートがバーを叩くラッキーに助けられた面はあったんですけど、崩されても最後まで諦めず対応し続けたことで、こちらに運を引き寄せられたのかもしれない。選手にはそう話しました。今日は自分たちがやりたいことより、勝負にこだわったサッカーを徹底したんですが、結果的にその判断は間違っていなかったと思います。粘り強さやチャレンジ、ハードワーク・・、選手たちは本当に頑張ってくれました」

試合後の原田監督はそう語って選手を労った。言葉どおり、本当に厳しい戦いだったし、内容で言えば完全に熊本のゲームだった。その中で勝ちにこだわり、実際に勝てたこと、主軸の選手が不在の中で、チームの底上げができた点は大いに評価したい。

一方、熊本は敗れこそしたが、攻撃的な姿勢や仕掛ける意欲の高さなど随所に力の高さを示し、育成クラブの底力を見せた。同時期にプロクラブを目指して活動を始めた2クラブの育成組織が順調に成長していることを感じられたのは、初期から見続けている身にとって実に嬉しく、頼もしい。今後も高いレベルで2クラブが競っていくことを期待していきたい。そう思わせてくれた一戦だった。

reported by 藤原裕久

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