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【アカデミーレポート】2023選手権への道②『第102回 全国高等学校サッカー選手権大会』 長崎県大会決勝戦展望。無冠の強者『長崎総科大附』か、夏の全国4強『国見』か!?

10月21日から開幕した『令和5年度(第102回)全国高等学校サッカー選手権大会』 長崎県大会』で決勝進出を決めたのは、2年ぶり9度目の優勝を狙う長崎総科大附と2年連続24回目の全国を狙う国見高校。決勝戦のカードを見れば第1シードと第2シードが順当に勝ち上がった印象だ。

【長崎総合科学大学附属高校】

今年、県内タイトル無冠の長崎総科大附だが、多くの県内サッカー関係者は口をそろえてこう評価する。

「長崎総科大附は夏以降、急激に強さを増した」

強さを増した最大の理由はプレス強度だ。出足の速さ、寄せの鋭さ、圧力、球際・・、長崎総科大附のそれは明らかに県レベルを超える。

このプレス強度が整った7月以降、長崎総科大附の戦績は劇的に改善。今年から戦うプリンスリーグ九州1部の成績も6月24日の第7節までの戦績は2勝5敗だったが、7月以降の8試合は5勝2分け1敗と立て直している。このとき唯一、長崎総科大附を破ったV・ファーレン長崎U-18はプリンスリーグ九州の優勝候補だが、県内最高ランクのタレントを擁するV・ファーレン長崎U-18ですら、長崎総科大附のプレスには苦戦した。

前線では「守備の部分でも成長してくれた」と定方敏和監督が目を細めるFW福島文輝、サイドアタッカーにも尾島栞蓮・甲斐智也・金城琉煕と質の高い選手がそろう。彼らのスピードとドリブルを止めるのはかなり難しいだろう。京谷來夢・淺見歓太のCBコンビも安定度が高い。原田真之介、宇土尊琉、坂本錠とタレントも豊富にそろい、「今年は一つもタイトルが取れず悔しい思いをしているので、必ず選手権で全国へいく」とキャプテン平山零音は語る。文字どおり無冠の強者と言っていいだろう。

【国見高校】

昨年、12年ぶりの全国出場を達成した国見だが、今年もしっかりとチーム力を上げてきた。新チームのスタートとなった県新人戦こそまさかの初戦敗退でスタートし、今年の公式戦初勝利を4月の県1部リーグまで待たねばならなかったチームだが、複数のポジションで起用されていた坂東匠のボランチ起用が固まると徐々にチームは安定。

6月の高総体県予選ではまだ不安定さを見せながらも「(苦しいときに)我慢できるようになってきた(木藤健太監督)」中で、8月のインターハイで全国ベスト4に進出。全国レベルの強豪と戦い競り勝った自信、足りなかった課題を認識できたことは大きな収穫になったという。また、夏以降に2年生の門崎健一、西山蒔人がグッと台頭したのも大きかった。

国見の強みは何と言っても各ポジションに武器となる選手がそろっていることだ。中山葵と西山の2トップは間違いなく県内トップの組み合わせだろう。仕掛けるスピード、推進力は県レベルではない。門崎のサイドからのクロスも強力な武器だ。また最終ラインに平田大耀が君臨。チームが苦しい時間帯を支えられるキャプテンはセットプレーにも強く、攻守両面での武器的な存在だ。この平田とCB中浦優太・2年生GK松本優星で構成する守備陣は今大会唯一の無失点を継続中。県新人戦で初戦敗退した経験を生かし、しっかりと仕上げてきたと言えるだろう。

【冬の王者はどちらか】

「堅いゲームにはなると思います。なので、勝負を分けるプレー、そこへの心構え、どう試合に入っていくかという部分の準備をしたい(国見:木藤健太監督)」

決勝進出を決めた直後の木藤監督の言葉どおり、決勝戦は1点を争うゲームとなるだろう。こういうゲームではセットプレーの存在が大きくものをいうが、長崎総科大附はセットプレーがお家芸の一つであり、国見も勝負強い平田の存在と門崎の成長でセットプレーが武器と呼べるレベルになりつつある。ここは互角といったところだろうか。

となれば、勝負のカギは長崎総科大附のプレス強度を前に、国見がいかにロストしないかということが重要になる。そういった意味では準決勝の長崎総科大附戦と対戦した海星の長いボールを使って裏を狙う戦いは一つ参考になる。総附のDF陣としてはしっかり弾き返してカウンターを狙いたいところか。

「今年はまだタイトルを取っていないですし、こちらは失うものは何もないので、受身じゃなく、チャレンジ精神を持ってやっていこうということで送り出したい(長崎総科大附:定方敏和監督)」

前回、両校が選手権県予選の決勝戦で対峙したのは2019年。このときは県内常勝王者だった長崎総科大附が国見を下して全国出場を決めている。そのときの雪辱を国見が果たすのか、逆に今季無冠の悔しさを長崎総科大附が果たすのか。11月12日、トランスコスモススタジアム長崎での決勝戦を楽しみにしたい。

reported by 藤原裕久

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