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アカデミーレポート:2024.九州プリンスリーグ第1節 V・V長崎U-18対サガン鳥栖U-18.2nd 試合レポート

「タレントというところで言えば、去年より少し落ちるんですけど、だからこそチームとして戦うことを大事にしたい」

年頭、原田武男U-18監督に今年のチームについて話を聞くと、そう返事が返ってきた。無理もない。昨年のU-18は、V・ファーレン長崎U-15史上最高成績をおさめた世代がU-18に昇格して最終学年となった世代である。伊藤小次郎や池田誉、トップ昇格を果たした七牟禮蒼杜や西村蓮音がいたことを思えば、黒瀬理仁・岩本悠也・宮崎陽といった実力派が最終学年となり、昨年からレギュラーの2年生SB上戸涼生がいるとはいえ、今年のチームに対してやや小粒感を持つのはやむを得ない。

だからこそ彼らが、昨季の世代が果たせなかったプリンスリーグ制覇へ向けて、リーグ開幕戦をいかに戦うのか。4月6日の九州プリンスリーグ第1節のサガン鳥栖2nd戦はまさにそこが注目点だった。

試合の立ち上がりは長崎劣勢で始まった。タイトなプレスに来る鳥栖のスタイルに対して、長崎は目の前ではなく、もう一歩先の味方にパスをつけようとしたのだ。だが、鳥栖のCBが予想よりラインを上げてきたために、長崎の奥につけるパスは味方に通らなかった。長崎のパスをカットし、サイドを広く使って攻める鳥栖の前に、長崎は何度か深い位置からクロスを上げられてしまう。

「クロスを簡単に上げさせないことを狙うのがチームのスタイルなのに、クロスを入れられてしまうことが多かった(黒瀬理仁)

「狙いが裏目に出てしまった(原田武男監督)」

想定外の流れの中、原田監督はすぐに修正の指示を出していくが、一度作ってしまった形は簡単には変えられない。その後も鳥栖がやや攻め込んで、長崎が守勢に守る時間が続く。だが、この劣勢をGK黒瀬の好セーブもあって無失点でしのいだ長崎は、シンプルな早い展開で鳥栖の逆を突くと、44分に内山航紀が先制ゴール。

守勢をしのいで先制点を奪った長崎はハーフタイムに、前半の戦い方を完全修正。本来の短いパスでのつなぎ意識させ、左SBの上戸、ボランチ岩本、FW宮崎陽がボールに関わる時間を増やしていくと、78分に金ヶ瀬仁人が追加点。その後に何度かあったチャンスは決められなかったが、鳥栖の反撃を無失点に抑え込み、長崎がプリンスリーグ初戦を白星で飾った。

やや苦戦で始まったリーグ初戦だが、終わってみれば2対0での快勝し、長崎が良い形でリーグ戦をスタートした。前半の鳥栖対策が裏目に出たとき、選手たち自身でゲーム中に修正できていればなお良かったが、原田監督の指示を受けたあとにしっかり修正できた点は評価できる。リーグ初戦でも対応力を発揮したという点は素直に喜びたい。

悲願のプレミアリーグ昇格へ向けて、V・ファーレン長崎が手堅く、着実なスタートを切ってみせた。

reported by 藤原裕久

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