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【アカデミーレポート】第57回高校サッカー長崎県新人戦レポート~栄冠をつかんだ長崎日大。目立った県北の台頭~

1月29日、「令和4年度 長崎県新人体育大会(第57回)サッカー競技」の決勝戦が行われ、2年連続11回目の優勝を目指す長崎総合科学大学を破った長崎日大高校が、18大会ぶり3度目の優勝を達成した。

令和4年度(第57回) 長崎県新人体育大会サッカー競技結果

冬の選手権で活躍した国見高校、昨年、選手権予選以外全ての県内タイトルを獲得した長崎総科大附、県央最強校の創成館高校、急速に強者への道を進んでいる九州文化学園、そして南山高校、鎮西高校といった強豪がトーナメントの片方に集中したことで、大会前から「長崎日大有利」との声は多かった。こういった前評判があると勝ち進むのはかえって難しいものだが、約30年に渡って同校を率いた亀田陽司監督(本大会ではコーチ)が県外校での指導のため県内大会は今回がラストとなることもあり、長崎日大のモチベーションは高く、組み合わせの優位さも含めて全てをチームの勢いに変えた。

大会初戦となった2回戦では長崎北陽台戦を4対0で制し、準々決勝の海星戦では守備強度の差でボールを保持する戦いを制して1対0。諫早商業との準決勝も固い守備から着実に得点を挙げて2対0とし、決勝戦でも長崎総科大附を相手に手堅い守備から先制点を奪い、後半に同点とされながらもPK戦を振り切ってみせた。

長崎日大は前線のターゲットである中川粋や中盤でも樋渡凌太郎の存在が効いていた。彼が良い位置取りや、ボールを奪いに出ることがチーム全体を安定させていたと思う。それにより内山柊真、友永響らは攻撃を仕掛けやすくなり、攻勢に回ることで白濱利羽・松尾咲ら守備陣も思いきったプレーができていた。攻守がよく噛み合い、大会中最も安定感があったチームだった。

長崎総科大附は伝統のプレスと速攻という形はすでに十分浸透している。平山零音、京谷來夢、尾島栞蓮、甲斐智也ら計算できる選手も多く、何よりFW福島文輝の存在は際立っていた。決勝も彼が本調子なら違う展開になったかもしれない。金城琉煕や坂本錠ら期待が持てる選手がいるのは好材料だろう。

九州文化は取り組んでいるサッカーが非常に洗練されていた。昨年までは選手の個性で勝負する雰囲気が強かったが、戦術の中でうまく個を生かしている感じがあった。諫早商業は大会で勝った2試合全てがPK勝ちと手堅さが光った。攻守共にまだ明確な形はないが着実に勝ち上がる地力があった。

一方、準々決勝で長崎総科大附に大敗した創成館は安定感を欠いた。とはいえ、池田隼人・篠原太希・伊藤弘晋ら面白いタレントが縦に揃っているので、噛み合い出せばかなり面白いチームになると思う。久留貴昭監督の手腕に期待だ。

優勝候補と目された国見は、大会初戦で攻勢に立ちながら、シュートがゴールに嫌われ南山の一発に沈んだ。とはいえ、他校の監督も「力は国見」と言うとおり、中山葵、平田大輝、西山蒔人、門崎健一らそうそうたる実力者がおり、ここからの巻き返しに期待したい。

また、日大に敗れたとは海星にもタレントは多く、佐世保実業も例年以上に良い選手が多かった。九州文化が初のベスト4入りをし、佐世保実業も着実にベスト8入りするなど、県北の力が増していると感じさせる大会でもあったと思う。昨年は国見・総附・創成館・日大の四強が絶対的だったが、今年は昨年より混戦模様の長崎高校サッカー界となりそうだ。そこからどこが抜けてくるのか楽しみである。

reported by 藤原裕久

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