中野吉之伴フッスバルラボ

【育成論】子どもにあった話し方ってどうするの?小さな子どもを理解するためのポイント

▼ 子どもが理解できる話し方と表現を

指導者に必要な能力は多種多様。そんな中、成人対象の指導者と育成年代の指導者とで大きな違いの一つとして《言語能力》が挙げられる。自分の感情や考えを論理的な思考で整理して、相手が理解できる表現で言葉にするのは、大人であればできる。中学生や高校生にもなれば、こちらが口にした言葉からこちらがイメージしたとおりの情報を受け取ってくれる確率は高まるし、相手が口にした言葉から、相手がイメージしているだろう情報を受け取りやすくはなる。

これはあくまでも一般論として。そうでない例ももちろん多々あるが、ここでそこを掘り起こしていくと話が進まなくなるのでご了承を。

特に幼稚園児や小学校低学年では言葉に対する理解度も表現度もまだまだ成長過程。わかることもあればわからないこともたくさんある。わかっているつもりで、わかっていないことだってたくさんある。言わんとしたいことがうまく伝えられずに感情爆発させる子だっている。

だからこの年代の指導者には子どもたちの言葉を通訳する役割だって担わなければならない。

例えばこんなことが練習中に起きたとする。A君がB君にファールされたと怒っている。

A君「〇〇が僕のことをファールしたんだ!」
B君「僕はファールなんかしていない!」

こんな風に怒り合っている子どもたちがいたら、皆さんはどう対処する?

こうした時に大人の価値観や経験則で子どもたちの言動を評価したり、決めつけてしまうのはよろしくない。

まずは話をゆっくりとお互いから聞くこと。それから起きた現象をわかりやすく説明して、お互いに納得してもらう手助けをすること。

「ボールをとろうとしただけなの」
⇒「ボールをとろうとしたけど、うまく取れなくてぶつかっちゃんだね。でもわざとじゃないんだよね」

「ボールが見えなくなっちゃったの」
⇒「ぶつからないように止まろうとしたんだね。でも近づきすぎてボールが見えなくて足を蹴っちゃんたんだね」

小さな子どもたちは自分がしたことや口にしたことに対して、次にどんな反応をしたらいいかわからないこともある。困った顔をしているつもりが、怒った顔のように見られてしまうこともある。だから言葉にできない思いを言葉にする手助けをしてあげる大人が近くにいる安心感はそこにあってほしい。

そもそも小さい子どもたちは何がファールで、何がファールではないかの境界がまだまだあいまいだ。家族にサッカーをしている人がいて、普段からテレビやスタジアム、グラウンドでサッカーをちょっとでも見たことがある子なら、なんとなく何がファールで、何がファールではないかの経験を持っている。でも、まるでそうした経験がないままサッカーを始める子だってたくさんいる。仲のいい友達と一緒に遊べると思ってきている子だってたくさんいる。

知っている子はいろんなことを大人の様にプレーしたがる。スローイン、FK、オフサイド。きっちりやりたがる。子どもにとってそれはまるでヒーローの世界のような感覚でさえある。でもみんながみんなその世界観についてこれるわけではない。お互いがまるで違う世界観、価値観でプレーをしていたら、それはいたるところでいざこざが起こる。

それに彼らは言葉の上ではわかっていても、それが本当に何を意味するかまではわかっていないことの方が多い。大人の真似をして口にしたい。誰だってそうだ。

だから育成指導者には我慢強さと丁寧さがとても大事だ。特に小さな子どもたちにとっては欠かせない大事なスキルといえる。

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