【ゆきラボ】フライブルクの観光スポットで立ち止まって考える/後半は今ものすごく推したい作品の話
こんにちは!ドイツの日常コラム、ゆきラボです。
今週はまずこちらの写真をご覧ください。
フライブルクの観光スポット、マルティン門です。観光シーズンになると、周囲にはカメラやスマホを構える人が絶えません。緑の尖った屋根と石組みのコントラストが素敵です。そして塔のすぐ横にはマクドナルドが入っています。古い建物の外観はなるべくそのままに、内部を現代的にリフォームした店構えはヨーロッパではおなじみの光景です。
少し雰囲気が違うのがこちらのシュヴァーベン門。マルティン門の周囲にはヨーロッパ各都市でおなじみのアパレル系チェーン店が多いのに比べて、こちらの周囲には昔ながらのアンティークショップやレストランやカフェ、個人経営の小売店などが多く、旧市街のなかでは比較的落ち着いた雰囲気のエリアです。
フライブルクをはじめ、中世のヨーロッパの都市の多くは周囲を城壁で囲まれていました。マルティン門とシュヴァーベン門はその当時のなごりです。ちなみにドイツ語で門を表す“Tor トアー”はサッカーのゴールポストのことも指します。サッカーファンが叫びたいドイツ語、それが“トアァーーー!”です。
Wikipediaより、16世紀に描かれたフライブルク。矢印は筆者。絵の左側、山のふもとにあるのがシュヴァーベン門、中央にあるのがマルティン門
さて、このマルティン門の横にはこんなプレートが埋め込まれています。小さいので建物そのものに比べてほとんど目を留める観光客はいません。左はマルティン門についての短い説明文。右の黒いプレートの文を訳してみました。
マルグレータ・メスメリン
カタリーナ・スターデルメニン
アンナ・ヴォルファリン
1599年3月24日 斬首され、火刑に処されるフライブルク市は、魔女狩りの犠牲になった全ての女性の代表として、彼女たちの記憶をここに遺す。彼女たちの苦しみ、罪もなく拷問を受けた全ての人たちの苦しみは、私たちに寛容さや人間性について伝える警鐘である。
このプレートの存在を知ったのはフライブルクに住み始めて数年ほど経ったころでした。それを今回改めて取り上げてみようと思ったのは、昨年末に読んだこちらのユヴァル・ノア・ハラリ氏のインタビュー記事がきっかけです。
NHK なぜフェイクは広がる?サピエンス全史の著者 情報で読みとく
読みやすく、かつ今読まれるべき内容だと思うので、詳細はぜひ直接ご一読頂きたいのですが、インタビューの中でハラリ氏は、情報技術の発達が人を幸せにせず、情報によって煽られた人が多くの人を死に追いやった例として、活版印刷と魔女狩りを挙げています。
活版印刷術が科学的な知見や宗教を広く普及させたという歴史的な評価が定着していますが、実は「魔女が災いをもたらす」という偽情報を急速に広めることにもなったというのです
インタビュー記事の後半は、まるで2025年最初の数か月に起こることを昨年末のうちに予言していたような内容ですが、とはいえ、そこには情報によって私たちが暴走せず、なんとか踏み止まるための希望も示唆されています。ユヴァル・ノア・ハラリ氏の新刊も、先日日本語版が出たばかりなので、これは読まねばな、と思っているところです。
イメージ https://www.photo-ac.com/
後半は、ハラリ氏の新刊以上に、今、一番読まれ、観られるべき作品だと個人的に思っている作品を推していきます。もうすぐアニメが最終回を迎える『チ。ー地球の運動についてー』。ネタバレはなるべく避けて書きますが、事前情報を知りたくない人はまずは原作マンガ、または配信中のアニメを観て頂いてからコラム後半へお進みください。
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