【ゆきラボ】【無料記事】2024年の終わりに
こんにちは。今年最後のドイツの日常コラム「ゆきラボ」をお届けします。
今年の学校の冬休みは12月21日から。夫も子どもたちも私も、それぞれに慌ただしかった12月でしたが、20日の夕方に夫と、23日の午後には家族4人で、フライブルクや近隣の市町村のクリスマスマーケットを回ることができました。日が短く、暗い時間の長い欧州の冬ですが、夕方早めの時間帯からイルミネーションを楽しめるのは悪くないところです。
20日の夜に、ドイツ東部の街マグデブルクでクリスマスマーケットに車が突っ込むという暗いニュースがあったのはみなさんご存知の通りかと思います。20日に夫と訪れたときは和やかな雰囲気だったフライブルクのクリスマスマーケットでしたが、翌日近くを通ると、楽しい雰囲気の中にも、険しい顔の警察官が会場内を多数巡回しているのが目立ちました。
フライブルクのクリスマスマーケットは、もともと車の乗り入れができない旧市街エリアにあります。それでもいくつか車道から直接繋がっている小道があるので、21日からは小道に鉄柵やコンクリートのブロックが設置され、道をふさぐように警察・消防の車両が停められていました。
この事件そのものについて、今この場で多くのことを書くことはできません。
夢のようにカラフルなイルミネーションがともり、おなじみのクリスマスソングが流れ、ホットワインの甘い匂いやソーセージの焼ける香ばしい煙が漂って、家族や恋人や友人と一年を振り返り、「また来ようね」「来年もよろしくね」と笑い合う。私にとっても、多くの人にとっても、クリスマスマーケットというのは本来そういう場所のはずなのに、言うはずだった「また来年」が消えてしまった人のことを思うと、胸の奥にずんと重い気持ちが広がります。
重い気持ちにはなりつつ、それでもキラキラと飾られた道を夫や子どもたちや友達と、焼き栗やソーセージをつまみ、クリスマスソングを口ずさみながら歩くのは心の底からじんわりと温まる幸せな時間。とても悲しいけれど、悲しさを見つめながらも、今ここにある幸せは手放すまい、と思った年の瀬でした。
ところで、フライブルクのクリスマスマーケットではこんなものを売っています。一見するとただの石のようで、クリスマスマーケットの中では突出して地味な売り物です。でも、小さな子どもから大人まで大人気。この近隣でこれが買えるのは(たぶん)この時期のクリスマスマーケットだけ、ということもあって、店の前はいつも賑わっています。
実はこれ、天然石のアクセサリーを扱うお店が販売する、メノウの原石です。大きさによって値段が違い、一番小さな指でつまめるくらいの石で3ユーロくらいから買えます。ゴツゴツとして砂や泥がついたままの石を選んでお金を払うと、その場で石切り職人さんが真っ二つに切って、中に詰まった泥や石のかけらを洗い流し、断面を円盤でシューっと磨いてくれます。
今年の春に急な引っ越しをし、それを機にあれこれと持ち物を整理した我が家ですが、あれ?子どもたちが昔買ったメノウって捨ててないよね?どこにしまったっけ?と探すと、ちゃんとありました。
外側はただの石なのに、内側にグレーの美しい縞模様が入ったメノウ
こちらのメノウには大きな結晶が。
シンプルですが、なんとも夢があって、職人さんが切ってくれる手元をじっと見守っていた子どもたちも、付き添っていた私も、とてもわくわくした思い出があります。
シンプルで夢のあるものに余計な解説を足すのはきっと野暮なんでしょうね。でも敢えて書きます。
外からはつまらない石ころのように見えても、中にキラキラしたものが素敵なものが詰まっている。そういうものってきっと私たちの身の周りにはたくさんあるはずです。中身を開けて綺麗に磨かないと、その素敵さが目に見えてこないけれど、でもちゃんとそこにあるんです。
もしかすると足元にころがっているかもしれないもの。その中から拾い出して、手の中に握りしめたもの。それを離さずにしっかりにぎりしめて、新しい年に向かいたいと思います。
2024年のゆきラボもありがとうございました。毎回、たくさんの方に読んで頂いて書き続けてくることができました。2025年もどうぞよろしくお願いいたします。健康で穏やかで笑顔の絶えない年になりますように。