【ゆきラボ】”Perfect Days” 再見、「待つ」ということを考えた
こんにちは!ドイツの日常コラム、ゆきラボです。ドイツの16の州は、少しずつ順番に夏休みをずらして設定しているのですが、7月末から8月上旬にかけては、すべてのドイツの州の夏休みが重なる時期。見慣れないナンバープレートの車や、一目で観光客とわかる人たちの姿を街のあちこちで見かけます。
同じように、夏休みに入って目につくようになったのは警察官の姿。観光シーズンはスリや置き引きなどの犯罪グループにとっても稼ぎ時なので、駅周辺や市街地など、人出の多いエリアを巡回して回る警官の数も増えているように思います。
夏のフライブルクの絶品ドリンク”カルテ・ゾフィー”。キンキンに冷えたフローズンワイン
それと、もしかすると今年はパリオリンピックの影響もあって、より警備に力が入れられているのかもしれません。フライブルクをはじめ、ドイツ南部や西部の都市は、フランスの高速鉄道TGVがパリまで直通で乗り入れしています。隣国で開催されているビッグイベントが、もしかするとこちらドイツの治安にとっても大なり小なり影響しているのかな…と、そんなことを思います。
オリンピックの観戦熱は、というと、先日の欧州選手権に比べて、至って平常モードです。詳しくは2021年の東京オリンピックのときに中野吉之伴が書いた記事が、ドイツ社会の平均的な実感にかなり近いと思うので、ドイツにとってオリンピックとは?にご興味のある方はご一読ください。
そんな中、友人と映画”Perfect Days”をもう一度観てきました。以前ご紹介したフライブルクの老舗映画館「フリードリヒスバウ」は、夏休み期間を利用して休館し、設備の点検と改装を行っています。その間、フライブルク市内の別の場所でオープンエアシネマを営業中。会場はフライブルク市民大学(VHS)と、隣接するイタリアンレストランに挟まれた中庭です。
プログラムは日替わりで、近年の話題作や、往年の名作のリバイバル上映、現在進行形で公開中の新作まで幅広く上映されます。フライブルクに住んでもうすぐ20年になりますが、毎夏開催されているこのイベントにくるのは実は初めてです。なにしろ屋外なので、毎日変わる上映作品の中で「これ観たい」と思った日に予定が空いていて、かつ雨が降らない日、という条件が揃わないと、なかなか来られなかったんです。
石畳の中庭にプラスチックの椅子を並べた客席。照明もなんとも風情があって良い
まだ少し明るさの残る21時30分。ポップコーンの甘い匂いのする通路。スクリーンの上をときどきコウモリが横切ります。上映前にはフリードリヒスバウのスタッフによる口上がありました。温かみのある感じが映画の雰囲気に合っていてなんとも良かったです。
映画の主人公、役所広司演じる平山の趣味の1つとして、フィルムカメラが登場します。撮ったものをすぐその場で確認できず、デジタルカメラに比べて極めて限られた枚数しか1本のフィルムに収められないこのアイテム。一時期、ずいぶん写真に熱中していた私ですが、フィルムを取り出して現像に出すときの気持ち、出来上がってきたプリントを一枚一枚眺めるときのわくわくした気持ちを、もうずいぶん前に置いてきてしまったなあ、とセンチメンタルな気持ちになりました。
後半はこの「待つ」ということについて、もう少し思うところを書いてみます。
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