【欧州サッカー紀行】日常の一コマにドイツ人っぽさを感じた一瞬とグラスルーツでユーロを楽しむ仲間たち
※欧州サッカー紀行より転載
▼ ドイツ人ぽさって?
6月25日、朝6時50分の電車でフライブルクを出て、まずはホテルを取ってあるヴォルフスブルクに向かう。この日は18時からベルリンで行われるオーストリア-オランダ戦を取材する。
ベルリンのホテルは相変わらず高い。その翌日はシュツットガルトへ移動なので、その道中でお手頃価格のホテルを探したところ見つかったのがヴォルフスブルクだったというわけだ。試合後でもICEで無理なく戻ってこられる計算だ。
定刻通りに出発した電車に乗って北上する。この日の遅延は20分ほど。全然許容範囲だ。途中カッセル駅を抜けたあたりで食堂車にコーヒーを買いに行く。
ところがカウンターが閉まっているではないか。
あれ?さっきまでアナウンスで「暖かいコーヒーや紅茶、小腹がすかれた方はぜひ食堂車へお越しください」と言っていたよね?
そう思っていると食堂車のスタッフが車掌さんと話しているのが聞こえてくる。
「ここはもう閉めちゃってもいいんですよね?」
「いや、ダメですよ。なんでこんな途中で?」
「この電車もうすぐ終点でしょ?」
「いや、これはベルリン行です」
「あ、そうでしたっけ?すいません、じゃあまたすぐ開けますね」
悪びれる様子もなく、イライラする様子もなく、あっさりとした会話。僕のほかにも数人が待っている。それをみてスタッフがにこやかにいう。
「10分ほどで開けますのですいませんがお待ちください」
待つしかないのでみんな待つ。1人の男性は、「うーん、私は後でもう一回くるとするよ。皆さんが無事買えますように」とにっこり笑って席へと戻っていった。
また別の人が来て、「ここまた開けるって言ってました?」と聞いてくる。僕の前に並んでいた人が「さっきあと10分で開けるといっていたけど、あとどのくらいかかるかはわからないわ」と落ち着いたトーンで答えている。
結局15分ほどで再開されたのだけど、カウンターのブラインドが開けられる前に、コーヒーやカプチーノを10個くらいお盆にのせて席へ販売に行く売り子スタッフの姿に僕らは意表を突かれた。
1人が思わず苦笑い。
「なんで、僕らがここでずっと待っているのを知っている中で、先に席に売りに行く用のコーヒーを準備していたんだろう?」
もう一人も茶目っ気たっぷりに答える。
「ここがドイツだからよ」
なるほど、じゃあしょうがないね、と納得してしまうのは僕がこの国で長く暮らしているからだろう。笑いをこらえきれずにいる僕に対して、二人が微笑みかける。
こうしたちょっと不思議なことも「ドイツだから」で片づけて、そのまま文句も言わずに自分の順番を待っている僕らの現象も「ここがドイツだから」なのだろうけど。
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全チーム、全試合を網羅はできないが、この1か月の間僕が実際に現場で取材してきた試合について、試合後の記者会見やファンの様子について、開催都市でのファンとの触れ合いについて、センセーショナルな結果を残した国々の取り組みについてなどなどを書きまとめたものだ。7万3千字以上と一冊の本になるほどの分量。
サッカーについてだけではなく、旅物語としても読める仕様になっているので、いろんな方にぜひぜひ読んでいただきたい。
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— 吉之伴@🇩🇪サッカー指導者/サッカーライター (@kichinosuken) July 21, 2024
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