【現地取材】「誰にでもできることじゃない」と絶賛されるシュトライヒ監督の人間味。キャプテンと監督の友情物語
▼ キャプテンと監督の友情物語
堂安律がプレーするフライブルクのキャプテン、クリスティアン・ギュンターはクラブ生え抜きの選手だ。
育成年代を一つずつ昇格し、セカンドチームを経由してトップデビュー。育成年代のころから現在トップチームで指揮を取るクリスティアン・シュトライヒ監督のもとで成長と向き合ってきた。
フライブルクで数えた出場数は1部で306試合、2部で31試合。サイドライン際をダイナミックに上下動するプレーが魅力で、特に左ハーフを務める元イタリア代表MFビンツェンツォ・グリフォとの息のあったコンビネーションプレーは、フライブルクの浮沈を左右する重要な武器だ。
キャプテンとしてチームメイトからの信頼はとても厚く、誰からも頼られる存在。どんなことがあってもあきらめず、愚痴を言わず、クラブへの愛を胸にどんな試合でも全力で戦う姿勢は、ファンからの最大級のリスペクトを集めている。
フライブルク一筋で成長し、ドイツ代表にも選出され、8度の代表歴を誇る。
シュトライヒ監督はそんなギュンターをクラブの象徴であり、プロ選手の鏡だとよく口にする。
シュトライヒ「ギュニィ(ギュンターの相性)は誰もが『あいつはプロになる』と言われるような才能の塊ではなかった。U16のころはレギュラー選手でもなかった。U17からU19に昇格できるかどうかも確かではなかった。その時点でのセンスや才能という点でみたら、ギュンターよりも優れた選手はいたのだ。私からしてもいい選手だけど、何かが足らないと感じていた。残念だが、プロにはなれないと思っていたんだ。
だが彼には、ハードワークに対してポジティブに取り組む心構えがあり、指導者の声に耳を傾ける謙虚さがあった。だから少しずつだが、確かに成長をした。そして成長が止まることがなかった。
ギュニィは毎回のトレーニングにだれよりも真摯に取り組んでいた。彼が手を抜いているところを見たことがない。どんな練習でも、どんな試合でも、本当に自分の力の最大限を引き出してチャレンジしようとしていた。
U19となり、少しずつチームに影響を及ぼせる存在となり、その後も継続的に成長し続けている。セカンドチームでデビューし、トップチームでデビューし、29歳でドイツ代表でデビューした。こんな選手がそうはいるだろうか?
毎回どんな野心や確信を持ってトレーニングをしているか。そこを私たちは正しく見極めなければならないのだ」
▼ ギュンターの不在
そんなキャプテンが今季長い間チームに不在だった。
シーズン前に行われたスイスリーグのグラスホッパー・チューリッヒとのテストマッチ。ちょうど僕も長男・次男とその友達を連れて試合観戦にいっていた。グラスホッパーサイドには元気でプレーする日本代表DF瀬古歩夢の姿もあった。僕の元チームメイトの息子で、のちにU17W杯で優勝し、バルセロナに移籍することになるノア・ダノビッチがトップチームデビューを飾った試合でもあった。
フライブルクが大勝したこの試合で、ギュンターは不運な競り合いで左腕を骨折。ファンも痛そうに退場するギュンターを心配そうに見送っていた。大事なキャプテンが負傷離脱するのはチームにとっての打撃。でもきっと数週間もすれば復帰できる。そして序盤をうまく乗り越えたら、復帰とともに調子をあげていくことができる。
ファンはそう信じていたし、僕もそこまで重くとらえていなかった。
予定通り数週間後に復帰したギュンターは、特製のプロテクターをつけて順調にコンディションを取り戻しているようにみえた。ドイツカップ1回戦では後半から出場すると決勝ゴールをマーク。ブンデスリーガ開幕戦ではスタメン出場を果たし、好アシストチームの勝利に貢献していた。
だが、ギュンターはその後2度目の離脱を余儀なくされる。トレーニング中に再び左腕を骨折。さらに追い打ちをかける検査結果が。実は一度目の骨折時のオペで負傷箇所が感染症を起こしていたというのだ。
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