川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】水戸はFKからの失点を防ぐことができたのか?【無料記事】J2第34節 #レノファ山口FC 2-2 #水戸ホーリーホック

【試合分析】水戸はFKからの失点を防ぐことができたのか?

目次

同じようなミスでチャンスを逃す
セオリー通りの壁にできる弱点

明治安田生命J2リーグ第34節 レノファ山口FC 2-2 水戸ホーリーホック

明治安田生命J2リーグ第34節、レノファ山口FC対水戸ホーリーホックが10月17日にセービング陸上競技場で行われ、2-2の引き分けとなった。水戸は勝点49(14勝7分け13敗)で10位、山口は勝点33(8勝9分け17敗)で17位となっている。降格圏の19位、愛媛FCの勝点は32。山口は連敗を4で止めたものの5試合勝ちなしと、苦しい戦いが続く。

同じようなミスでチャンスを逃す

山口は「3-4-2-1」、水戸は中盤をボックス型にする「4-4-2」で臨む。

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3バックと4バック。システムこそ違えど、両チームが目指すサッカーは非常に近いように映る。そのためか、同様のミスでチャンスを逃していた。それは76分に水戸が2-2と追いつき、オープンな展開になってから顕著となる。

80分過ぎ、山口の右SHの川井 歩が、水戸の左SB大崎 航詩を振り切ってフリーになる。川井は少しドリブルしてからクロスを上げる。しかしキックは強すぎ、ターゲットを通り越して逆サイドのラインを割る。この時、川井にプレスに行った大崎は飛ばされ、横転していた。つまり川井の前には完全に誰もいない。そしてペナルティエリア内は2対4で山口の数的不利な状況。つまり慌ててクロスを上げる必要性はなかったのだ。代案を示すならば、川井は中へと切れ込み、水戸の選手を釣り出してからマイナス方向のパスを出すこともできたはずだ。

水戸は84分、左SB大崎が左前方のサイドスペースにロングパス。山口DFの裏に送られたボールにFW安藤 瑞季が追いつき、山口DF渡部 博文はスライディングによるカバーを試みる。渡部がスライディングを選択した理由は、安藤がクロスを上げると予測したからだろう。実際、渡部の予測は的中。安藤が蹴ったグラウンダーのクロスは、ピッチに身体を投げ出した渡部に当たって止まる。このボールは、カバーに来た山口MFヘニキにより処理される。DFにとってスライディングは最後の手段。安藤が冷静に渡部の動きを見ていればボールを止める、あるいは切り返してからクロスを上げられたはずだ。

直後のプレーでは、水戸の右SB村田 航一がバイタルエリアにいるFW藤尾 翔太へ横パス。山口の選手に囲まれた藤尾は、左サイドからオーバーラップしてきた大崎にパスを出す。しかしボールは大崎の頭を大きく越えてタッチラインを割る。もっと正確なパスを出せたら大きなチャンスになっていただろう。

こうした事象が試合終了まで続く。トラップやパス、プレー選択がもう少し正確性があれば、両チームといまとは異なる成績となっていたに違いない。

セオリー通りの壁にできる弱点

話を巻き戻す。水戸の2失点は、いずれもFKからだった。15分の失点は、山口FW池上 丈二が直接。61分の失点は、山口MF田中 渉が左足から巻き込むようにファーサイドへ。このボールにヘニキが頭で合わせた。2失点目は、山口がセオリーに潜む弱点を突いたことに起因している。

“壁”作りのポイントは2つ。1つは選手の身長、もう1つは選手の間隔だ。まずチームで最も背が高い選手は、壁の一番端には置かない。これはキッカーから見ると一番近く、あるいは一番遠い位置に置かないとなる。なぜならば、一番端の選手はなんらかの動きを見せる相手選手をケアする必要があるからだ。仮に相手選手をケアするために釣り出された場合、壁にはキッカーにとって最も邪魔な長身選手がいなくなってしまう。こうしたことから、壁の一番端には背の低い選手を配置。これがセオリーとなっている。もう1つのポイントは、壁を作る選手同士は隙間を作らないで並ぶことだ。そもそも失点場面は、相手選手が味方選手の間にポジションすることから生じることが多い。わざわざ隙間というスペースを作る必要はないのだ。

61分のFK、水戸が作った壁の端、ファーサイドには176センチの大崎、その隣には174センチの中里 崇宏が配置される。壁の作り方はセオリー通りだ。田中のキックは、そのファーサイドを狙ったものだった。大崎の後ろにポジショニングしていた182センチのヘニキは、ボールがファーサイドに入ってくる瞬間に大崎の前へと身体を入れてヘディング。山口の2点目は、セオリー通りに作られた壁の弱点を的確に突いたものだった。

流れの中でやられそうな状況はなかっただけに、セットプレーで2失点というのは大いに反省しないといけない。ファウルをするところやもう少しだけアラートに準備をしていれば、失点していなかったと思っています。セットプレーで2つも失点したら苦しくなるのは当たり前なので、そこは反省しないといけないところです。

この失点を防ぐことは難しい。そのため秋葉 忠宏監督も、ファウルをしたことやファウルをする場所を反省点に挙げている。

川本梅花

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