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水戸は秋田の先制点を防げたか?【試合分析】J2第29節 #水戸ホーリーホック 0-3 #ブラウブリッツ秋田

【レビュー】水戸は秋田の先制点を防げたか?

目次
水戸は秋田の先制点を防げたのか?
水戸に逆転のチャンスはあったのか?

明治安田生命J2リーグ第29節・水戸ホーリーホック対ブラウブリッツ秋田が9月11日にケーズデンキスタジアム水戸で行われました。結果は0-3で水戸の黒星。水戸は12勝4分け13敗で勝点40の9位のまま、秋田は9勝10分け9敗で勝点37の11位に順位を上げました。

以下は両チームのフォーメーションを組み合わせた図です。水戸も秋田も「4-4-2」でミラーゲームになりました。

秋田の先制点は防げたのか?

両チームは「4-4-2」で中盤がボックス型の同じシステムです。しかし、それぞれの局面での戦い方が違います。秋田のゲームプランは、早い時間帯で先制したら全員が引いて守って時にカウンターを仕掛けます。

秋田と対戦する場合、先制点を奪われるとゲームは難しくなります。秋田はピッチの中央を固めて守ってくるからです。攻める側のポゼッション率は高くなるものの、それは秋田の意図するところ。秋田は相手にボールを持たせているのです。

密集した中央をドリブルで突破しようにも、なかなかうまくは行きません。秋田は「4-4-2」のゾーンで守っているため、水戸がワイドのポジションに選手を配置しても、サイドには無理に人数をかけず、定石(じょうせき)通り「サイドは捨て」中央に守備力をかけてきます。もしサイドからクロスを入れられても、ペナルティエリアには6人が常に守備で待機しているため、ボールはペナルティエリアの外に跳ね返されてしまいます。

秋田は先制したら、状況によってですが、両サイドのどちらかにボールを入れて、相手と競い合わせてサイドのゴールライン近くまでボールを運び、クロスを上げます。36分の追加点、武 颯のヘディングは、まさにそうしたやり方での得点でした。水戸は、ますます難しい状況に追いやられます。

まずは開始2分の1点目、吉田 伊吹のゴールシーンを振り返ります。

ペナルティエリア内でFW武がボールを持った時、ゴール前には水戸DF3人と秋田の2選手がいます。この時点で3対2、水戸の数的優位です。異変が起こったのは、左サイドハーフ(SH)茂 平に武からボールが渡った時です。

FW吉田は、センターバック(CB)鈴木 喜丈の前にポジショニングしていました。茂にボールが渡った瞬間に、吉田は鈴木の背後に移動します。鈴木は当初、ボールと吉田を同時に視界に入れられるようにポジショニングしていたのですが、吉田が視界から消えてボールに注視するようになります。かといって鈴木が吉田に付いていけば、自分のいたポジションが空いてしまう。そうしたら、茂はパスではなくドリブルしてフリースペースに方向転換するかしれません。だから鈴木は、吉田が視界から消えても動けないのです。

さて秋田の先制点を防げる可能性があったか。答えは「あった」です。少し厳しい見方かもしれませんが、鈴木の横には左サイドバック(SB)の大崎 航詩が立っていました。吉田が鈴木の後ろに入った時に、大崎は吉田の前に入れるチャンスがありました。武がボールを持ってペナルティエリアに入ってきた際、鈴木との距離を大崎が縮めてコンパクトにしていれば、ですが。実際には吉田をフリーにして、ボールウオッチャーになっていた。以下の図はその場面を記しています。

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