川本梅花 フットボールタクティクス

【レビュー】葛野昌宏監督のマネジメント力が勝利を導いた【無料記事】J3第18節 #カマタマーレ讃岐 0-1 #ヴァンラーレ八戸

【レビュー】葛野昌宏監督のマネジメント力が勝利を導いた

目次
選手層を上げながら試合に勝つという難題
交代策はどうだったのか?
勝利のために完璧な準備とプレーが求められる

明治安田生命J3リーグ第18節、カマタマーレ讃岐対ヴァンラーレ八戸が9月12日にPikaraスタジアムで行われました。結果は1-0で、八戸の白星に終わりました。以下が両チームのフォーメーションを組み合わせた図です。讃岐は「3-6-1」で八戸も「3-6-1」のミラーゲームになりました。讃岐は2トップを組むと予想されていたのですが、完全マッチアップを望んできました。

選手層を上げながら試合に勝つという難題

八戸が勝利するためには「こうしたやり方しかない」というような戦い方で白星を手にしました。讃岐戦での勝利は、もちろん選手全員で勝ち取った白星ですが、葛野 昌宏監督のマネジメント力が大きかったと考えられます。試合に勝つためには、選手全員が同じ方向を見ていないとなりません。前節・テゲバジャーロ宮崎戦[0●1]から讃岐戦までの準備期間で、選手のモチベーションを上げて意思統一をはかった痕跡がこの試合には十分に見られました。

八戸の課題でもある選手層の問題ですが、実戦で選手に経験を積ませながら底上げしなければなりません。これは難問です。しかし、いつ誰がどんなアクシデントに見舞われるのか予測できないので、そう言った意味でも選手層の底上げは重要課題です。底上げのためには、試合で選手をピッチに立たせて、経験を積ませることが大切です。サブメンバーとしてベンチにいてはレベルアップなどできません。

交代策はどうだったのか?

讃岐戦の選手交代は、理にかなった采配でした。

まず46分に高見 啓太に替えて廣瀬 智行を入れました。廣瀬を右ストッパーにして小牧 成亘を左ストッパーに置きます。左ストッパーだった佐藤 和樹を左ウイングバック(WB)に持っていきます。結果的に、80分の決勝点を演出したのが廣瀬でしたから、起用が当たったことになります。また、この試合の小牧のプレーには「しびれ」ました。70分過ぎに讃岐のペナルティエリアで3人に囲まれても、決して倒れることなくボールを離さずにマイボールにしました。さらに讃岐左サイドからのグラウンダーのクロスをスライディングでクリアするなど、90分集中力を切らさずプレーしたのは見事でした。動きが軽やかだったのでコンディションが上がってきたのでしょう。

61分には、センターハーフ(CH)の新井山 祥智を下げて坪井 一真をピッチに送ります。今季の新井山は、昨季よりもコンディションが低下して動きが重く見えます。同じ時間に、この試合がデビューとなった野瀬 龍世から中村 太一にチェンジします。81分、試合を終わらせるため佐藤に替えて岡 佳樹を起用します。最後の90+2分に丸岡 悟を原山 海里に変更して残りの時間を有効に使い切ります。

この交代は全てに意図があって、交代した選手のプレーを見れば「なぜピッチに出されたのか」を選手がきちんと理解していることが分かります。

勝利のために完璧な準備とプレーが求められる

八戸は自陣だけでなく讃岐陣内の1対1でも、激しい当たりを行っていました。ボールを持っている相手選手に「ガツーン」と音がするようなプレッシャーをかけないと、相手はマイボールの状態を続けてゴールに向かってきます。さじ加減はありますが、「ファウルしてもいい」くらいの強さが必要です。この日の八戸の選手はフィジカルで負けるシーンはありませんでした。

特別指定選手の野瀬を起用したのは、英断だったと思います。札幌大学サッカー部の河端 和哉監督から野瀬の話を聞いていたので、「いつ出るのかな」と期待していました。ロングシュートやサイドスペースからハーフスペースに入ってくるドリブルなど、見せ場がいくつかありました。次節もぜひ起用してほしい選手の1人です。

監督自身の考えはあるのでしょうが、見ている者としてマイナス点を探すのが難しいほど、完璧な勝利だったと思います。チームとしてのゲームモデルをしっかり備えて、スタメンの顔ぶれ、ゲームプランと選手交代策、全てがパーフェクトに近い試合でした。逆説的に言えば、完璧に準備して内容を実際の試合で完璧にプレーしないと勝てないのが現状だということです。きれいなゴールシーンでなくてもいいのです。「いまだ」というポイントでシュートを打ち、「ここだ」というポイントでクロスを上げなければ、何も起こらないのです。

次節も讃岐戦のような試合運びができれば、勝利は遠くありません。

川本梅花

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