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宇都宮徹壱ウェブマガジン

小説家と革命家が考える「地元にクラブがある幸せ」  津村記久子✕ロック総統✕宇都宮徹壱トークイベント<1/2>

写真提供:YFFF

 今週水曜日の5月15日は、Jリーグが開幕して26周年のメモリアルデーであった。この日は都内にてJリーグ主催の「Jリーグをつかおう! 第1回シャレン!ネットワークミーティング」に取材者として出席。四半世紀を過ぎたJリーグが55クラブに増加し、スポーツ競技団体のフレームを超えた「社会インフラ」となりつつあることを、あらためて実感することができた。

 さて今週は、2月17日にYFFF(ヨコハマ・フットボール映画祭)2019で開催されたトークイベント『ディス・イズ・ザ・デイにあるサッカーを愛せ漫遊記』の模様をお送りする。登壇者は、このほど『ディス・イズ・ザ・デイ』がサッカー本大賞を授賞した、芥川賞作家の津村記久子さん。KFG(錦糸町フットボール義勇軍)での活動で知られる、ホンダロックSCサポーターのロック総統。そしてMCは不肖・宇都宮が務めている。

 津村さんと総統は、これが初対面。「地域とサッカー」という共通のテーマがなければ、バックグラウンドがまったく異なる両者が出会うことはなかったかもしれない。今回のトークイベントでは、事前にそれぞれの著書を読んだ上で「地元にクラブがある幸せ」についてクロストーク。そして最後には、Jリーグが歩んできた四半世紀について、それぞれの視点から総括していただいた。

 一見すると「異色」でありながら、実は根っこの部分で共通する部分も少なくない。そんな三者による絶妙な掛け合いを、最後までお楽しみいただければ幸いである。(収録日:2019年2月17日@横浜)

<目次>

*サッカーは勝ち負けだけがすべてではない

*サッカーの試合にはいろんな人がやって来る

J1は「非日常」でJ2以下は「日常の延長」?

*西京極での試合は「勝ち負け以外でも楽しい」

*人口の多さだけで土地の価値は決まらない

*それぞれの土地に物語がある、ということ

写真提供:YFFF

「サッカーは勝ち負けだけがすべてではない」

──ロック総統、そして津村記久子さん。今日は当イベントにご参加いただき、ありがとうございます。特に津村さんについては、ダメ元でオファーしたにもかかわらず、わざわざ大阪から来ていただいて恐縮するばかりです(苦笑)。

津村 私、けっこうお断りすることもあるんですけど、この仕事だけは断ってはいけないと思って来ました(笑)。

──ありがとうございます! ロック総統からは昨日の夜、泣き言のようなDMをいただきましたね(笑)。「初対面の人だと、すごく緊張するんですよね」みたいな。

ロック総統 私的なDMを公開するのはやめてもらいたい(笑)! Twitterで荒ぶっているわりには、意外と気が小さいことが最近バレてしまっているんでね。

──かくして、津村さんとロック総統による夢のツーショットが実現したわけですが、今回のイベントに臨むにあたって、お互いの作品は読んでいるんですよね?

津村 読みました!『KFG蹴球文化論』を壱巻から参巻まで。有隣堂の方が「トークショーに出るんだったら、是非読んでください」って送っていただいたんですけど、すごく面白かったですね。特に「いいな」って思ったのが、総統がゴールを決めたホンダロックの選手にスパイクをプレゼントする話。前田悠佑選手が、ゴールを決めると「26.5です!」って叫びながら走ってくるっていう(笑)。本当にいい話でした。

総統 いちおう説明しますと、ホンダロックが天皇杯で東京ヴェルディを倒した試合があったんですね。その時に点を決めた前田っていう選手が、僕のところに駆け寄ってきて、何を言うかと思ったら「26.5です!」と。僕はいつもゴールを挙げた選手に、スパイクを買ってあげる儀式をやっていたんですけど、そうしたら「サイズはいくつです!」とか「アンブロがいいです!」とか、いろいろ指定してくるようになったんですね(苦笑)。ですので、最近は本当に活躍しないとプレゼントしないようにしています。

津村 こういうサポーターと選手の密な関係って、本当にいいものだなって読んでいて思いました。それと「サッカーは勝ち負けだけがすべてではない」という総統の主張も、とてもよく理解できましたね。

──とはいえ、総統の本っていつもカバーが怪しすぎるんですよね。内巻敦子さんのイラストが可愛らしい『ディス・イズ・ザ・デイ』と比べるとなおさら(笑)。

総統 本屋さんに聞いたんですけど、僕の本をレジに持ってくるお客さんは、なぜか表紙を裏にして出すという。これはまさにエロ本を買う時の手法ですよね。

津村 私は普通に地下鉄で読んでいましたよ。カバーを付けるにも、なかなか合うサイズがないから「もうええわ」って感じで(笑)。

総統 ちなみに壱巻の写真は、丸井錦糸町店のエレベーターでゲリラ撮影したんですよ! 白装束がオットナー参謀長で、パンチパーマのちょび髭なのがライト曹長。われわれ3人はこの格好でよく錦糸町を闊歩しているんですが、職場の人とすれ違ったときにはさすがに焦りましたね。向こうは気づいていなかったみたいですが(笑)。

──その人は総統の「世を忍ぶ仮の姿」しか知らなかったわけですね(笑)。

津村 あと、参巻のカバーもすごくいいですね。総統が全力疾走していて、まるで映画のポスターみたいです!

総統 これは奈良クラブとのアウエー戦で、スタジアムで全力疾走していた時です。まあ、ご存じない方もいらっしゃるかと思うんですけど、JFLのスタジアムって大人が全力疾走しても誰からも文句を言われないので(苦笑)。

──というわけで本日は、この3人でお話を進めていきたいと思います。

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