長崎サッカーマガジン「ViSta」

アカデミーレポート:第58回(令和5年度)長崎県新人戦レポート~長崎高校サッカー新時代の傾向がより顕著に~

1月20日に開幕した『令和5年度(第58回)長崎県新人体育大会サッカー競技』は、1月28日に決勝戦が開催され、国見高校が2年ぶり25回目の優勝を飾って終了した。こちらの事情で申し訳ないのだが、V・ファーレン長崎の始動が例年より遅く、大きめ原稿の依頼などもあったため、今回の県新人戦取材は例年よりしっかりと取材できなかった。そんな状態で記事を書くのはやや気が引けるのだが、事前取材した部分なども交えて取材する中で見えたこと、感じたことを記していきたい。

【頭一つ抜けていた国見】

大会前から国見については「最も戦力が整っている」という前評判が高かった。FWに西山蒔人、サイドに門崎健一、左サイドバック古川聖來、GK松本優星、ボランチ山口大輝といった昨年からレギュラー格だった選手が多く在籍し、昨年末のプリンス2部参入戦で1年生だった原田高虎が大きく台頭。原田の成長で門崎を真ん中に回すこともできるようになった結果、攻撃がさらに多彩になった。

準決勝では優勝候補の一角だった長崎総科大附を力でねじ伏せるような勝ち上がりで、決勝の長崎日大戦でも終始試合をリードし、盤石の強さを発揮。頭一つ抜ける存在であった。まだゲーム運びに拙さを見せる面もあるが、この時期としてはここ数年で最も強い年代ではないだろうか。

【安定していた長崎日大】

3年生の卒部で昨年からのレギュラーが一気に減った長崎日大だが、着実に結果を出すあたりはさすが。大会2回戦で強豪の創成館、準々決勝で諫早商業、準決勝で鎮西学院と1回戦の佐世保南以外は全て同じ県央との対戦だが、ノーシードからしっかりと競り勝ってきた。

ただ、決勝戦では国見の前に思うようにボールを保持できず苦戦。新チームのエース大町璃史を起点にゲームを進めることができなかった。突破力のある池田真紘や、スキルのある野村功汰など戦えるタレントはいるだけに、ミスを減らしていきたいところだ。

【フィニッシュが課題の総附・台頭する県北2校】

ベスト4に終わった長崎総科大附だが、ボランチに宇土尊琉、CB角田碧斗、前線に坂本錠など各ポジションに全国を知るタレントがおり走力も高い。中でも右サイドで出場した土屋蕾聖の突破はかなり強烈で決勝でも国見にあわやのシーンを作っていた。それだけにフィニッシュの精度に物足りなさが残ったのは残念。そこさえ高まれば十分に上で戦えるチームだろう。

また、今大会ではここ数年感じていた県北勢のレベルアップが顕著だった。準々決勝で長崎総科大附に敗れた佐世保実業は、相手の決定力不足に助けられた面があるにせよ、近年で最も総附と競った試合を展開し、横田翔栄の突破に可能性を感じさせた。昨年の高総体県予選で初めて県ベスト8入りした九州文化はゲームをコントロールしながら、得点を奪いきれない面はあったが、今年も好チームを作っていることが感じられた。県北の2校は確実に上位を狙える力をつけている。鎮西も波はあるものの地力は高く、今大会初戦で長崎日大に惜敗した創成館も戦力的には十分上位が狙える。ここからの各校の成長が実に楽しみだ。

【歴史の再現か、新たな歴史の誕生か】

数年前から、海星高校の濱口徳彦監督、長崎南山の村里英樹監督、諫早商業の西信幸監督といった長く強豪を支えた指導者たちが一線を退き、2年前に長崎総科大附の小嶺忠敏監督が逝去。昨年に亀田陽司監督が新潟県の加茂暁星高監督に就任のために長崎日大を離れ、着実に世代交代が進んだ長崎県高校サッカー。今回の新人戦は、それに伴い見え始めてきた県内勢力図の変化が顕著になってきたことを感じさせた。

その中で国見が再び強豪となり始めていることに「歴史の再現性」を感じるが、長崎日大、総附など、県内にまだまだ国見打倒を果たせる強豪が存在する。このまま国見が一強時代を再現するのか、長崎日大がそれを阻むのか、それとも総附が総附一強の再現を果たすのか、創成館、鎮西、海星、県北の二強があらたな歴史を作るのか。今年も県内高校サッカーから目が離せそうにない。

reported by 藤原裕久

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