【指導者の挑戦】シーズン途中でU15監督を離れ、コーチに。一人の頑張りで何でも何とかなるわけではない。これも大事な経験だ
監督を辞めることにした。
所属クラブでのこと。今季はU17でコーチ、U15で監督という立ち位置で指導者を担っていたけど、特にU15に関して一人で抱え込むものがあまりにも大きくなってしまったのがその理由。U15監督を外れてコーチとしてシーズン終了までチームをサポートすることに決めた。
「一人じゃ無理だ」
これは今季始まる前からいろんな人に言われたこと。アシスタントコーチもスタッフもつかない状態でU15監督を引き受けて、しかもファースト、セカンドの2チーム登録しようとしたんだから設計に無茶があるのは僕にもよくわかっていた。
練習は週に2回とはいえ、登録選手数は35人弱にもなる。指導者1人で見切れるものではない。日本だと大人数を指導することがスタンダードにあるから不思議に思われる人もいるかもしれないけど、それぞれの選手とちゃんと向き合って、一人一人の成長を考えながら、トレーニングや試合に臨もうとしたら、一人で《ちゃんと見れる》と言える数字は10人がいいところ。15人でなんとか。20人だとギリ。
集団心理学でいえば1人に対して15人を超えると集団のバランスを保つのは極めて難しくなるとされている。だから個々との対話や自主的な取り組みを排除していかないと組織のなかで摩擦ばかりが生じやすくなる。だからそれをコントロールするために規律や約束事を徹底することで、表立った問題が起こらないようにする手段をとらざるをえなくなる。それが度を超えてくると命令や各種ハラスメントにつながっていくのだろう。
基本的にドイツだと1チーム20人前後で監督・コーチ2-3人つくのがスタンダード。グラスルーツではボランティアで関わるのがベースなので、みんながみんな毎回のトレーニングに来れるわけではない。スケジュールを互いに調整し合いながら、シーズンを戦い抜かないとどこかで無理が出て長続きできない。
そんなわけで1人で1チーム見るのでも大変なのに、それを2チーム同時にみようとしているんだからそりゃみんな止める。シーズンが始まると週末にそれぞれの公式戦が入ると、試合に向けたオーガナイズも2倍以上になる。
それでも「じゃあしょうがないから1チーム登録で」とは僕にはできない。サッカーはサッカーが好きなみんなのためのもの。うまかろうと、まだそこまでだろうと、そこに違いはあるべきではない。他の子より少し足が遅くても、少し力が弱くても、少しスキルにムラがあっても、少し性格的に難しいところがあっても、サッカーをしたい気持ちに対して誰かが優劣をつける資格なんてない。
世間ではどうしても「うまい子」「年上の子」から優先的に環境が整えられていく。人員や場所や時間的に可能であれば、その次のカテゴリーもサポートされるけど、みんながみんなそんなチャンスを手にできるわけではない。
いまの僕はサッカーのおかげであると言っても過言ではない。それは今僕のもとでプレーしている子どもたちにとっても同じことだと思うんだ。
正直いえば、セカンドチームでプレーしている子には協力的な親が少ない。これは僕の今見ているチームでの話。そうではないところもたくさんあるし、あった。アウェイ戦で車を出せる人がとても少ない。試合の時に僕をサポートしてくれる人がいない。事務的な作業は僕一人で抱えないといけなくなる。
それでも昨季から見ている子たちには、この1年で本当に成長した子たちもたくさんいる。それまでもあまりクラブからサポートされてこなかった彼らが、ほんの少し環境を整えて、ほんの少しちゃんとオーガナイズされたトレーニングを繰り返して、ほんの少しサッカーを理解しながら試合を重ねていったら、どんどん成長していく様子を見てきた。
だから彼らがプレーできる環境を守ってあげたい。それが僕の思いだった。
でも果たして僕の思いと子供達の思いはどこまでかみ合っていたのだろう?彼らのいう「サッカーがしたい」と僕が思う「サッカーをしよう」はどこまで一緒だったのだろう。
何かがどこからかずれてきていた。
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