【中倉’Voice】苦渋の決断のドローの後に迎える特別な試合。サポーターの想いに結果で応えるべくアビスパはピッチに立つ
2024明治安田J1リーグ 第31節
日時:2024年9月21日(土)19:05キックオフ
会場:ヤマハスタジアム/12,421人
結果:ジュビロ磐田 0-0 アビスパ福岡
我慢のドローだった。長谷部茂利監督は次のように振り返る。
「勝ちたいのは山々だし、アウェイであろうと勝ちにいっていたが、昨年までの終盤の自分たちの力強さとか、引き分けを勝ちに、負けを引き分けにしていたというところで言うと、今年は比較的逆に出ていることが多いので、最後の数分間で勝点1をという判断をした。今シーズンの終盤に来て、勝点をどう積んで、どう与えないかというのも大事なので、札幌戦のようにならないように、京都戦のようにならないようにという判断だった」
目標の6位を達成するためには勝点3が必要な試合。その一方で磐田との勝点差は8試合を残して7(磐田の残り試合は9)。敗れれば残留争いに巻き込まれかねない試合に負けることは許されなかった。そんな試合は立ち上がりこそリズムを刻んだが程なく試合は膠着。互いにチャンスは少なかったとはいえ、一発の怖さは磐田の方が上だった。残り数分となったところで勝点1を取りに行ったのは苦渋の選択だった。
これで10戦勝ちなし。試合後、勝利を求める声を浴びせるファン、サポーターに対し、田代雅也は次のように言葉を返した。
「誰も今日の結果に満足していない。みんな悔しい。応援してくれているのは分かっている。この前のホームで伝えてくれた。それは伝わっている、俺らには。それを結果で示せなくて申し訳ない。次は俺たちにとっても、みんなにとっても絶対に勝たなければいけない試合だから、もう一回戦ってほしい。お願いします」
それでもすべてが悪かったわけではない。「もう1回、自分たちの立ち返る場所というか、そういうものを大事にしようということだった」(長谷部監督)と言うように、この日を前にアビスパは自分たちのベースである守備について再確認。この日は球際の強度、ゴール前の粘り強さ、そして細部にわたるアラートさなど、アビスパの原点ともいうべきところを見せて磐田を完封。10試合振りに無失点で試合を終えたことは、苦しい中で光明が見えたと言ってもいいだろう。
そして迎える九州ダービー。アビスパにとって特別な試合が始まる。磐田戦で守備の改善が見えたとは言え、攻撃力不足という以前から続く課題に解消の目途は立たず、最後の質の部分は依然として問題を抱えているが、特別な試合では結果以外に必要なものはない。
「内容はどうでもいいんで勝つだけ。それに向けてどういう戦いをしなければいけないのかというのは言わなくてもみんな分かっていると思うが、そこはもう一度、こういう状況だからこそ声に出して確認したい」とは田代。そして、叱咤激励を送るファン、サポーターの想いに対して「今週末に結果で伝えたい」と力強く口にする。
そして、ダービーとは互いの順位や実力、あるいはその時々の状況に関係なく、この試合に勝つという想いの強い方が勝利を収めるのは過去の歴史が証明していること。対戦相手の鳥栖は9戦勝ちなしで現在は5連敗中。順位も最下位。しかもシーズン途中で監督が代わり、選手も代わるという非常に厳しい状況に置かれているが、ダービーに限って言えば、それはアビスパにとって何らかのアドバンテージになるものではない。
田代は続ける。
「鳥栖はなかなかうまくいっていない印象で、そこはアビスパも一緒だが、そんなチームに対してどういう振る舞い方をするのかというのは、僕はすごく大事だと思う。どういうモチベーションで、どういう心の持ち方で挑まなければいけないのかというのを試合までに整えたい」
磐田戦後、1日のオフを挟んで再開された17日のトレーニングは、いつもにも増して高い集中力と緊張感に包まれ、非情に良い雰囲気の中で行われていた。チームのために、自分のために、ファン、サポーター、そしてアビスパに関わるすべての人たちのために、ただ勝利だけを求めるというのは全員の想いだ。
特別な試合は28日の19:00、アウェイ・駅前不動産スタジアムでキックオフの笛が鳴る。いつものようにスタジアムに集うファン、サポーターと、それぞれの場所から、それぞれの方法でアビスパへの想いを送る仲間とともに心を一つにして戦いたい。求めるものは勝利の2文字。その結果のためだけに全力を尽くしたい。
[中倉一志=取材・文・写真]