【中倉’Voice】得点力、スピード、フィジカルと三拍子そろったアカデミーのエース。前田一翔のJ1でのチャレンジが始まる
逞しくなった。それが記者会見での率直な印象だった。
昨年、トップチームの一員としてルヴァンカップ、天皇杯に出場した時も体幹の強さが窺える逞しい上半身が印象に残ったが、この1年間で鍛えられた身体がより精悍に見えた。
「去年のルヴァンカップの鹿島アントラーズ戦で、代表クラスのセンターバックと対峙した時にフィジカルの差をすごく感じたので筋トレで鍛えた」(前田一翔)
一回り絞りこまれたように見える体躯も体重は2kg増。戦える身体に鍛え上げてきた。
それは数字にも表れている。現在、アビスパU-18(以下U-18)が戦っている高円宮杯 JFA U-18 プリンスリーグ九州では、第10節を終えて(8/24現在)11得点を挙げて得点ランキング1位。首位を走るチームの中心選手として得点を量産しているほか、今夏に行われた第48回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会でも3得点を挙げて、U-18の6年ぶりのベスト4進出に大きく貢献した。
その得点力が彼のストロングポイントであることは間違いないが、それも含めて彼が持つトータルの能力の高さが評価されたことがトップチーム昇格内定に繋がった。柳田強化部長は次のように話す。
「ドリブル突破、相手との駆け引きからディフェンスラインの背後を突いてのフィニッシュ、クロスへの飛び込み等々、様々な得点の形を持っている選手。守備に関しても非常に献身的に行うことができる。身体的な特徴に関して言えばスピードが非常にあり、スプリントを繰り返す力というものも非常に長けている。加えてフィジカルコンタクトも非常に強く、身体を当てることを厭わない選手。高校年代ではトップレベルの力を持っている」
併せて、福岡の町に笑顔と活力を生み出すことも期待されている。「彼は地元クラブ出身の選手。今も既に(前田)一翔選手がU-18で活躍していることを喜んでくださっている指導者の方々や応援してくださる方々が、いっぱいいるというふうに聞いている。プロ入り後も、そういう方々に喜んでもらえるような選手になってもらいたい」と続けるのは柳田部長。本人も「城後選手のようにアビスパを背負っていく選手に自分もなれればいい」と話す。
また、先日行われたパリ五輪のサッカーを見て「自分も4年後のロス五輪に出たいなと刺激を受けた」とも。「プロ1年目から試合に絡んで得点を決める、得点に絡む、そんな選手になりたい」と意気込みを口にする。
しかし、その前にU-18所属の選手としての仕事が残っている。それはU-18年代の最高峰の舞台である「高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ」にチームを昇格させることだ。
「U-18は、現在、プレミアリーグ昇格に向けて戦っているが、何としてもプレミアリーグに昇格させてからトップチームに来るように。そこはもう必ず成し遂げてもらいたい」(柳田強化部長)
U-18の今年一番の目標を達成し、さらに逞しさを増してプロの世界に飛び込んでくることを期待したい。
[中倉一志=取材・文・写真]