石井紘人のFootball Referee Journal

2013J1第21節 甲府×川崎 佐藤隆治審判団評

■主審:佐藤隆治

 採点:1

 

鈴木隆行のベルギー戦でのゴールの写真。

つま先分、ほんの数CMが鈴木、そして日本代表の運命を変えたというドラマチックな一枚として、多くのメディアに取り上げられた。

フットボールには、数センチの悲喜交々がある。

 

それは、判定も同じように思える。

PAの中か外か、たった数センチ、どちらで起きたファウルなのかという判定に、チームやサポーターの喜怒哀楽が存在する。

 

 

佐藤隆治は、その判断を迫られた。

ファウルなのは見極めている。あとは、中なのか外なのかを決めなければいけない。

 

佐藤は、中とした。

 

だが、ファウルが起きた地点は数10㎝外であった。

 

 

 

日産スタジアムを満員にした親善試合、横浜FM×マンチェスターユナイテッド戦。

この試合を割り当てられたのは佐藤だった。

 

これには、日本サッカー協会審判委員長である上川徹の思惑があったと思う。

 

上川自身、審判界での評価とは裏腹に、現役時代はファンに嫌われていた部分がある。2003年のJリーグアウォーズでは、優秀主審賞を授与される際にブーイングを受けた。そういった上川への目を変えたのがドイツW杯だった。

ビッグマッチでのレフェリングは、外部の評価を変える。西村雄一や家本政明もそうだった。それを理解しているからこそ、Jリーグ20周年記念マッチとなった浦和×鹿島戦の主審を、西村でも家本でも吉田寿光でもなく、佐藤に託したのだろう。

 

だが、たったひとつの、一方で大きすぎるというアンビバレッジなジャッジのミスが、負のスパイラルに佐藤を引きずりこむ。

この誤審をきっかけに、佐藤は過去の家本のように色眼鏡で見られてしまう。

 

だからこそ、横浜FM×マンチェスターユナイテッド戦を、そこから脱する一歩とさせたかったのだろう。

そして、佐藤はその期待に答えた。徐々に信頼を回復させ、この試合も順調に進んでいた。

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