【インタビュー】#水戸ホーリーホック ここが最後の戦いの場所になる #木村祐志 取材は「 #アツマーレ 」より パート3
木村祐志選手のプレーを記憶に留めたのは、2018年2月3日に行われた「いばらきサッカーフェスティバル」での対鹿島アントラーズ戦であった。彼が描くゲームの中での流れを読みながらのパスとアクションに「なぜ?」という疑問が湧き上がった。この場合の「なぜ?」という疑問は、「なぜ、トライアウトからの選手なんだ!」という驚きの「なぜ?」である。
僕は、木村選手に一度、尋ねたことがあった。それは、0-3で敗れた東京ヴェルディ戦の前だった。
——木村くんはトライアウトで水戸に加入したんだよね。
木村 そうです。トライアウトで入りましたけど、入り方は気にしていないので。
——(ロアッソ)熊本にいた時は、まったく、試合に出ていなかったね。それはどうしてなの?
木村 去年は怪我をしていた時期もあったんです。それに、あんまり自分が生きるようなサッカーでもなかったんです。ボールをどんどん蹴ってしまうサッカーをやっていましたから。蹴られたボールを競り合って、次にセカンドボールを拾え、というサッカーですね。
——鹿島戦の木村くんのプレーを見て、びっくりしたんだよ。こんなプレーをするのに、なんで熊本では試合に出られなかったんだろうかって。(ジェフ)千葉戦の後で、サッカーライターの西部謙司さんと話になってね。木村くんが、アウトボールにした場面があって、そのシーンについて、西部さんは「ああ、彼はここでゲームをいったん切りたいと思ったんだよね。ゲームの流れを読んでプレーしている選手だと思うな」って言われててさ。
木村 例えば、(ツエーゲン)金沢戦の試合では、最初の立ち上がりは、安パイというか、両チームともボールを蹴っていました。しだいに落ち着いてきて、セカンドボールも拾えるようになったんです。フィールドの中にボールが入ってきていたので、自分だったり、(黒川)淳史だったりがボールを引き出していきましたよね。そこから空いたスペースができて、サイドバックのジエゴが上がってきたんです。得点の場面もジエゴがフリーになって、(岸本)武流が決めてくれました。ああいう場面をもっと作って行きたいんです。ゲームの流れを読んでプレーするというのは、こうなったらこうなるだろう、ということのイメージの共有だと思うんです。周りの選手といかに自分のイメージを共有してもらえるのか。
——西村強化部長から聞いたんだけど、木村くんのプレーをトライアウトで見た時に、「10番をつけさせたい」と思ったそうだよ。
木村 ああ、そうなんですか。僕は、「何番でもいいです」って言ったんですよ。
——熊本から水戸に加入す際は、すぐに決心がついたの?
木村 ちょっと考えました。試合に出られるところでプレーしたい、どんな環境でプレーをやらせてくれるのか、ということを考えました。まあ、自分は、年も年なので。
——他のクラブからも話があったの?
木村 ありましたけど……ここでやろうと決めました。
——なんで、水戸に決めたの?
木村 西村さんの熱意だったりを感じました。それに、練習場やクラブハウスなど新しくなる部分があると聞かされたので、そこに自分も入って行きたいと思いました。
——西村強化部長は、どんな口説き文句で木村くんを誘ったの?
木村 まあ、いろいろ言われたんですが、そうですね……「来てくれたら嬉しい」と。「君のプレースタイルにも合う」とも言われましたね。
——木村くんが考える木村くんのプレースタイルとはどんなものなの?
木村 ボールをたくさん受けながら、周りも生かしながら、ピッチ全体を見て、ということは意識してやっています。そういう意味では、金沢戦での得点シーンは自分の理想的なスタイルでした。ジエゴのクロスも良かったですし。
—— じゃあ、今の水戸のスタイルというか、どんな戦い方なのかを表現してくれる?
木村 攻撃の時は、僕や淳史が中に入っていける時。サイドハーフの僕や淳史がフォワードやボランチと絡みながらプレーしている時。そういう時は、かなりいい攻撃ができている時だと言えます。守備は、みんなやらないとダメですよね。そこをやらないと、水戸では試合に出られない部分だと思います。フォワードが相手のゴールキーパーまでボールを追いかけてくれれば、後ろの選手はプレーがしやすい。相手をハメやすくなります。
—— 長谷部監督のサッカーを見るポイントとして、「トライアング」はキーポイントになるよね。
木村 3人目の動きがよく出ている場面、トライアングルのパス交換があって向きを変える動きの場面。そうしたことを試合に出していきたいんです。もっともっと回数を増やして、精度を上げていけば、得点のチャンスが増えるはずです。今の水戸は、真ん中からも、もっと崩せると思うんですよね。そこを増やしていけたらいいんですけど。
——最後に、次節は東京ヴェルディ戦だけど、相手についてどう考えている?
木村 ヴェルディの守備は、けっこう組織的なんですよ。そこを崩すのは難しいテーマですが、相手の守備を崩すためには、もう少し精度をあげないとけない。味方同士でのパスの回し方だったり、相手の裏への取り組み方だったり。そこは、選手間で、もっと合わせられる部分だと思います。練習から日々、やっていることを試合で出したい。練習でやったことは、最終的に裏切りませんから。
川本梅花